あとがき

作者あとがき



この度は「もう一つの、ボクの物語」を読んでいただいてありがとうございます。



―1―



この作品を持って書きたかったテーマは

人はいつでも"選択"しなければならない、という事です。


作中では、劇場の少女こと怨念かばんは

物語内でセルリアンの攻撃によって、強制的に「死」という結末を選ばされてしまいました。

しかし不思議な劇場世界で彼女は、残してしまった友人の幸せの為に戦う道を選びました。



そして、結末を迎えれば消えてしまうとわかっていた劇場世界の博士と助手も

、笑顔で見守るという選択をしました。

劇場世界のこの二人は、いわば怨念かばんの思考から生み出された存在ですから

つまり怨念かばんの"自分はもうかばんではない"という思考の部分でもあります。


そして半分中身の入っている劇場ミライも

自分の娘のような存在である、かばんから生まれた怨念に対し

もう一度だけ物語へと戻るよう、最後の力を託します。

ですが、これは生き返りとは違いますので

劇場ミライももちろんわかっていたんですね、結末を迎えるとどうなるのかを。


でも劇場ミライは

例え残酷な結末が待っているとしても、最後の幸せを感じて欲しい

という選択をしたわけです。これは、とても勇気のいる事だと思います。


だって、どうせ消えるんだから最後くらいいい目を見てこい、って我が子に言うようなものですよ。

もし劇場ミライの意識がどこかに残るのだとしたら

我が子を突き落とした、ような罪悪感を永遠に背負わなければいけないでしょう。


それを覚悟して、選択し、責任を負ったわけです。


そして、最後のサーバルも、現実から離脱し怨念かばんとの永遠に閉じられた世界を選択をします。

サーバルの場合、わけもわからず時間もない、少ない情報の中で選ばされたわけですが、現実でもそういうこといっぱいありますよね。

全然わからないけど、今ここで選ばなければいけない、その結果を背負わなければならない――

そんな時に、「好きだから」って自信を持って選べる、ってとても勇気がいることなんです。


選択し、後悔しない。

もし間違った選択だったとしても、ちゃんと結果を受け入れ、前に進んでいく。



結末では閉じられた世界を選んだ二人でしたが

最後のシーンの怨念かばんの台詞通り、可能性は無限にあるんです。

どんな物語をえがくのも、語るのも


サーバルは選んだ劇場世界で怨念かばんと過ごしていく責任を果たす。

怨念かばんは成仏せずにサーバルを巻き込む劇場世界を選んだ責任を果たす。


でも、きっと二人には後悔なんてありません。

自分で自信を持って選択したからです。



そういう、選ぶということの意味を、物語を通じて少しでも感じて頂けたらな・・・と思います。


―2―



話は変わって、タイトルの「もう一つの、ボクの物語」ですが、二つの意味を込めてあります。


一つは単純に「IF」の意味ですね。


しかしこれは「けものフレンズ」という作品に対しての「もう一つ」ではありません。

もう一つの「ボク」に対してです。


二次創作として生まれた、「劇場の少女」のことです。


昨今の作品では、むやみやたらにキャラクターが死んだり、ループしたり・・・というのが多いですが別にこの作品の本質はループもの、じゃないんですよね。

舞台がループしているだけであって別に”ループしているから答えが見つかる”・・・でもないし。

そもそもループすることによって、少女が得られるものが何もないんですよ。検証も正直意味の無いもの、としか書かれてないですし。

新しいフレンズと出会うことも無いし、誰かの細かい過去や心理描写を得るわけでもない。


ただただ、繰り返し、誰かに感謝する事を再確認していく。

その為に、死の間際に時間を置いて整理する、為の舞台装置でしかないわけです。

それを「ループものだから○○っぽい~」と言われてしまうと、ちょっと悲しいかな――と。



そして、もう一つの意味ですが

原作アニメである「けものフレンズ」を放送中に見ていた時

色々な結末を想像しました、頭の中でこうなるのかああなるのか、と

それはきっと皆さんも同じだと思います。考えましたよね?特に11話から12話までの1週間。


その間に考えられた物語の全てが、きっとこの劇場世界にあるんです。

作者も色々な試行錯誤を繰り返し、アニメでの大団円を迎えられた「ボク」の一人なんです。


そして、これを読んでいるあなたも「もう一つのボク」であってほしい。


「けものフレンズ」という作品から得られたもので、色々な世界、舞台を作り上げて欲しい。そうすれば、フレンズ達の冒険は無限に広がっていきます。


たった2人の少女が無限に繰り返し生み出す世界のように。


そして、いつか2期がやってきて、閉ざされた劇場の扉が開かれた時

生み出された数多の物語が世界中に溢れる――そんな幸せな結末、いいじゃないですか。


その時、その物語のどれか一つを作ったのが「もう一つのボク」であってほしいな――と思います。



長くなりましたが、本作品を最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回作などは現段階では考えておりませんが、またどこかでお会いできれば幸いです。



読んでくれた、もう一つのボクへ感謝!

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もう一つの、ボクの物語 あきなろ @akinaro0105

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