時に「否定」は行き詰った道を切り開いてくれるのかもしれない……

 最初、途中まで読んでレビューを書いた時、タイトルに「別の視点で見る大切さを身勝手な王様が教えてくれる……かも?」と書いた。
 これは読み終わってみても、間違いではなかったと思う。
 ただ、この「別の視点」というものが、なんなのかがわかった。

 それは「否定」だ。

 主人公の聖王は、ある意味で行き詰っていた。
 そんな彼は、最初に兄を否定し、この世界の仕組みや聖王という立場を否定し始め、最後は性別まで否定する。

 しかし、その否定は、どれもが悪い否定というわけではない。
 今までの「そうだと思っていた」という自分の固定観念を否定し、視点を変えて視界を広げるという、非常に建設的な否定の仕方も含まれていた。

 否定という言葉ではなく、もう少し適切に言えば、「疑問をもつ」という思考と言えるかもしれない。
 その疑問から、突破口が見えることもあるのかもしれない。

 行き詰った人に、見方を変えるきっかけを与えてくれる物語になってくれることだろう。

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