言の葉からこぼれ落ちたものは

本作を読み終わった際、ほぼ反射的に★3つを付けると同時に、数年前に話題になった「ペットのクローン」を扱ったビジネスの事を思い出した。
当時そのニュースを目にした私は、正体不明の恐怖を感じたものだったが、本作の読後感には同じような空恐ろしさが漂っている。

言葉というものは、発したその瞬間から移ろっていく。やがて意味を変え、あるいは失い、発せられたその時に持っていた確かなものは、思い出の中のものだけになっていく。
あまりにも儚い、刹那の存在だが、その時その時に輝くからこそ、尊く美しいものとして人の心に響く。

ではもし、言葉からその「刹那」が失われたなら、一体何が起こるのか?
改めて、言葉というものについて考えさせられた。

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