知らないうちに「コニーの夫」は ひっそり増えているのかもしれない

初音ミクなどの人気ボーカロイドにも、声の提供者がいて、
彼女たちはしばしばボカロイベントに出演するらしい。
「ミクさんから仕事をもらっている」人が声優であることを、
私はボカロファンの知人から教わるまで知らなかった。

ボカロ楽曲には、生身の歌手には歌わせられないくらい
インモラルでセクシュアルで頽廃的、犯罪的なものも多い。
どんな楽曲を書こうと作詞曲者の表現の自由であり、
人間相手ではないから制限を受けずに済むのだ、と。

「中の人」が何を感じようと、「コンテンツ」に感情はない。
「中の人」にも「コンテンツ」にも否と口にする権利はない。
鈍感な社会は、傷付いた小さな個人を平然として押し潰す。
新たに現れる便利なモノから、一定数の人は突き放される。

世界最初のヒト由来の細胞株、ヒーラ細胞の話を思い出した。
患者本人や遺族のインフォームドコンセントが曖昧なまま、
ヒーラ細胞は本人の死後も増殖と使用が続けられている。
医学への貢献は非常に大きいが、倫理問題はどうなのか。

私たちの知らないうちに、社会の陰に押し込められながら、
「コニーの夫」はひっそり増えているのかもしれない。

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