語りのうまさが恐怖を牽引


異常に敏い小学生の主人公、こっくりさんを支配の道具にしている女の子に早くもほの見える狡猾な女のエグさ。それに抗おうとする主人公の思惑。こっくりさんを巡るコントロール・ゲームの果て。黒幕は誰なのか……僅か五千字余りの掌編なのにおなかいっぱい。

例のごとくタイトルも上手いですが、冒頭から読者を引っ掴み、文字を追うごとに情景が加速して、後段の「バトル」(私にはそう思えました)のあたりでピークを迎えます。そして……。

いえいえ、ネタバレはよしましょう。
幼少の頃に関わった経験のある方は背筋に冷たいものを感じるかもしれません。

語り手(主人公)の一貫した乾いた表現、心の動きの描写が秀逸で、この物語の強靱な屋台骨となっています。真の恐怖は語り手の怯えや絶叫からは生まれない。読者の想像力の中では育まれるものなのでしょう。もちろん、育まれる種子は読者の気づかぬ闇夜にそっと蒔かれているのです。

 この物語は再読に十分耐え、二度、三度と読むうちに新しい発見もあることでしょう。読みやすいからと言って、一回だけの読み捨ては本当にもったいない。読むほどにリーダビリティの影に潜む巧手が分かるはずです。


これを機に、同じ作者様の他作品を読まれることもお勧めします。
きっと期待は裏切られないことでしょう。

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嘘憑きな十円玉

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