天才(作者も?)のカッコよさが存分に味わえる物語

軽やかにして奥深い、飄々としているようで熱い想いが流れている。
これは作者の如月さんの作品を読むたびに思うことの一つです。

読みやすくて、キャラクターが活き活きしていて、すごくのめりこんで読んでしまう。
流れているストーリーは楽しさいっぱいなのだけれど、その奥底にはもっと深いテーマも隠れている。
そんな『如月印』のつまった物語です。

ちょっとコミュニケーションが独特の山科君という天才が出てきます。
物理・数学といった分野にはめっぽう強くて、というよりも誰も寄せ付けないほどの天才児。
さらに彼には音楽の才能もあるのですが、こちらにはプロにはなれないとすでに見切りをつけています。
これだけでも相当なインパクトのあるキャラクターです。

そして主人公は彼の幼稚園時代の幼馴染の女の子。
二人が中学校で再会し、ともに合唱コンクール、吹奏楽部での活動を通して、多感な時代を共有していきます。

もちろん中学生ですから、まぁクラスの連中ともいろいろあります。
いい奴もいるし、ひねくれたやつもいるし、無関心な奴もいる。
それでも一つのイベントを通じ、ぶつかりながら、まとまっていく様はとても読み応えがあります。
たぶん誰の胸にも似たような思いの一つや二つがあるはずで、そんなところがまたくすぐられます。

こう言ったシーンを彩るのが山科君の天才ぶり、そして迫力の演奏シーンです。
特に山科君の天才ぶりが発揮されるところは不思議と胸がスカッとしてきます。
まさに生身のヒーローを見ている感じなのです。

とにかく読み応えがあり、ストーリーも楽しく、天才のカッコ良さに惚れ惚れし、そして最後には……
おっと、この先は是非ご自分の目で。

天才は出てくるし、音楽の話でもありますが、なんと何の前知識もいりません!
それでもしっかりと物語を楽しむことができます。
逆に知ることの楽しさまで味わえる物語なんです。
こういう話はなかなかありませんよ。
ぜひ読んでみてください。

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