GIFT

作者 如月芳美

55

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★★★ Excellent!!!

音楽にのめり込む青春は、私にとってツボでした。
レビューするのがおこがましいほどの素敵な小説でした。





もっとずっと読んでいたかったです。でも、すてきなラストにほっとしました。ネタバレかな。私の親友の元旦那さんはアスペルガーです。娘さんも発達障害なのですが、二人とも才能を持っています。そういう私も障害者ですが、障害の代わりに才能があったらいいな、と楽しく妄想できました。私にとっては、色々と救いに感じた作品ですが、素敵な恋愛と青春を感じたい方、そうでない方も、ぜひ一読ください。

★★★ Excellent!!!

それは、「彼ら(中学生)」は、大人が思っているより「大人である」と言う事。

青春、思春期、若気の至り、あの頃は楽しかった・・・
大人になると、そんな「良い思い出」として、全て片付けられてしまう。

しかし、まさに「今」を生きている彼らにとっては、全てが「戦い」の毎日。
整ったものはいびつに見え、正論には嫌悪感を示し、進路、将来、未来・・・不安と焦燥にもがき、苦しみ、のた打ち回る少年達の姿は、もはや泥だらけで、血まみれで、見るも無残な「人間」の姿だ。

本作は合唱、吹奏楽、ピアノと言った音楽が主軸になっていて、一見すると「学園もの、青春もの」を地で行く展開になりそうだが、ピアノの音は、ある者には雑音に、歌声は悲鳴に聞こえ、さながら「音が苦」の様相が垣間見える。

「見るも無残な人間」だから、「音が苦」になってしまうのか。

神様は、そんな「音が苦」を「音楽」に変えるためのヒントを彼らに与えたのだろうか。

青春の全てを吹奏楽に費やした身としては、読みながら当時にあれこれと思いを馳せる事が出来て、とても有意義で楽しい時間を過ごせた。

そして、当時の「みっともなくて情けなかった自分」を、少し誇らしく思えたのである。

★★★ Excellent!!!

軽やかにして奥深い、飄々としているようで熱い想いが流れている。
これは作者の如月さんの作品を読むたびに思うことの一つです。

読みやすくて、キャラクターが活き活きしていて、すごくのめりこんで読んでしまう。
流れているストーリーは楽しさいっぱいなのだけれど、その奥底にはもっと深いテーマも隠れている。
そんな『如月印』のつまった物語です。

ちょっとコミュニケーションが独特の山科君という天才が出てきます。
物理・数学といった分野にはめっぽう強くて、というよりも誰も寄せ付けないほどの天才児。
さらに彼には音楽の才能もあるのですが、こちらにはプロにはなれないとすでに見切りをつけています。
これだけでも相当なインパクトのあるキャラクターです。

そして主人公は彼の幼稚園時代の幼馴染の女の子。
二人が中学校で再会し、ともに合唱コンクール、吹奏楽部での活動を通して、多感な時代を共有していきます。

もちろん中学生ですから、まぁクラスの連中ともいろいろあります。
いい奴もいるし、ひねくれたやつもいるし、無関心な奴もいる。
それでも一つのイベントを通じ、ぶつかりながら、まとまっていく様はとても読み応えがあります。
たぶん誰の胸にも似たような思いの一つや二つがあるはずで、そんなところがまたくすぐられます。

こう言ったシーンを彩るのが山科君の天才ぶり、そして迫力の演奏シーンです。
特に山科君の天才ぶりが発揮されるところは不思議と胸がスカッとしてきます。
まさに生身のヒーローを見ている感じなのです。

とにかく読み応えがあり、ストーリーも楽しく、天才のカッコ良さに惚れ惚れし、そして最後には……
おっと、この先は是非ご自分の目で。

天才は出てくるし、音楽の話でもありますが、なんと何の前知識もいりません!
それでもしっかりと物語を楽しむことができます。
逆に知ることの楽しさまで味わえる物語なんで… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

クライマックスの文化祭までは本当に色々あって、どうなることかと思うのだけど、終わってみれば、結局良いヤツばっかりなのだった。

彼らと同世代だった頃を自然と思い出すと、募るのは後悔の念。

富樫や森園のように熱くなれていたら、
山科のように自分を貫けていたら、
美咲のように強い気持ちを持てていたら、
そうでなくても青木や佐々木のようになれていたら。

あの頃の思い出が不完全燃焼なのは、全部途中のまま終わってしまったからなのかもしれない。最後まで正直になれず、向き合うことができなかったからなのかもしれない。

そんな感傷に浸ってしまうほど、クラスの反応がリアルでした。


スイッチの入ったときの山科がかっこいい。怒濤の指示出しは、読んでいるだけで背筋が正されてしまいます。

彼がスイッチが入れられる環境にあるとき、そこには互いに送り合うGIFTがあったのだと思いました。

★★★ Excellent!!!

もう、とにかく読め、の一言で良いのだけれど、それではレビューになりません。
中学生の合唱コンクールを「一風変わった男の子」と普通の女の子を軸に描き、ハラハラさせつつ、最後にはほろりと涙ぐませる——そんな物語です。音楽の知識がなくても置いていかないように気を使った組み立て。登場する少年は類稀なる才能の持ち主ですから、語り手である女の子にはわからない世界に住んでいます。けれど、「わからない世界」は彼女を拒絶することなく、瞬間、ふっと周囲の人々と触れ合う。

成長するときの不安定さと思春期のときめきを包み込むように音楽の世界が広がります。そして、そこかしこでくすくすと笑える。

だから、やはりまとめるとすれば——とにかく読め!

★★★ Excellent!!!

中学生の人間ドラマもあり、音楽の面白さもあり、と濃厚なお話でした。
こういう類の大きな壁を経験するには彼らはあまりに若いけれど、だからこそ得るものがあったのだろうと思いました。彼らが難題を乗り越えていく姿は感動ものです。
音楽は多少経験しているので、途中「わかるわかる」と楽しみつつも山科君の技量に圧倒されました。

★★★ Excellent!!!

個人的に合唱コンクールという学校行事が大好きで。
絶対クラスの中で喧嘩が勃発するんですよね。
それぞれ合唱コンクールに向かう姿勢も能力も違う。頑張りたい子が掲げる大義名分と、「ガチ」にはなれない、なりたくない子の言い分。
歌が苦手な子と、もっとうまく歌えないと納得できないという子。
それでも彼らは一つのハーモニーを作り出さなきゃいけない。
違う視線で別の方向を向いている者同士が、一つの音楽を作り上げなきゃいけない。

「フツー」のクラスでさえ衝突を繰り返しながら合唱コンクールに向かっていくというのに、この『GIFT』の主人公みさきちゃんのクラスには「フツーじゃない」男の子がいた。

山科君。
彼は「空気が読めない」し、部分的に異様なほど能力が突出している。ちぐはぐな彼の存在は、教室に嵐を呼び込んで……

力みのない滑らかな文体と、素人にも熱が伝わる吹奏楽部の演奏の描写、何より飽きさせない物語の展開で、最初から最後までよどみなく楽しみました。

読後タイトルの「GIFT」とはなんだろうと振り返ってみて。
作中で語られていることはもちろんですが……
クラスに嵐を持ち込んでくれた彼の存在自体が登場人物全員にとっての「GIFT」だったのだと、勝手に考えた次第です。

うん、いや、ごちゃごちゃ語ってしまって申し訳ない。言いたいのはただ一言。

「この作品、面白いから読んでみて!」

★★★ Excellent!!!

ここ十年ほどで日本語に新たに加わった語彙に「無双する」という動詞がある。ある種のアクションゲームに端を発するこの表現は、「無双」という語が本来持つ「並ぶものなき優越性」という意味を超えて、「一騎当千の強さで多勢を圧倒すること」を表す俗語としてネット世代のボキャブラリーに定着しているようだ。
WEB小説の世界でもこの「無双」が大変好まれるらしい。天啓を受けた主人公が独力で獅子奮迅の活躍を見せ、敵の大群を一掃するという筋書きの小説が雨後の筍の如く量産され、実際に人気を博しているのは、人が本質的に「無双」の光景に快感を覚える性質を持ち合わせていることの証左かもしれない。
そう思って振り返ってみれば、今世紀に入ってからのWEB小説の隆盛を待つまでもなく、古今東西の秀逸な創作には「無双」の要素を持つものが少なくないことに気付かされる。戦いやスポーツを題材とするものは言うに及ばず、政治、芸術、遊戯、職業、恋愛、いかなる題材にも「無双」の構造を持ち込みうることは、日本最古の長編小説たる「源氏物語」をはじめ、歴史に輝く星の数程のヒット作が証明しているところであろう。

さて、本作「GIFT」である。
アスペルガー症候群の天才少年を物語の中心に据え、思春期ならではの混沌たる人間模様と淡い恋愛を爽やかな筆致で描き出したこの作品。本作の主題は「障害と呼ばれる個性を周囲の人物が受容していく過程」に置かれていると思われ、現にその点に着目した複数のレビューが既に寄せられているのだが、なればこそ私は敢えて別の点に着目した講評を書きたい。即ち、本作の数多い美点の中から、私は、天才少年・山科が音楽に関して無類の才覚を発揮する「音楽無双」の要素をピックアップしたいのである。
作中、山科が主人公のピアノや、クラスの合唱、吹奏楽部の合奏を指導するシーンは、見事なまでの「音楽無双」である。彼は、中学生のレベルを遥… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

新しい学年、新しい友達。主人公の中学生生活はときめきと共に始まります。そこで出会う天才的少年。
しかし、楽しい学園ものの雰囲気はじわじわと変化します。

登場人物と同時に読者が試される差別意識という針。それはナイフとなり、斧となる。
学校における調和とは? 友情とは? 解決の難しい〝心の問題〟が提示されます。

― Harmony ―

もうひとつのテーマとも言える音楽の描写から、音を感じてください。
団体で行う音楽も、音の調和だけではなく心の調和が必要ですね。

★★★ Excellent!!!

山科くんが好きです。
ちょっとちぐはぐだけど、強くて、賢くて、魅力的。
ちぐはぐな所さえ、彼の魅力のひとつなのかもしれない。
小説を読んで涙腺が緩むなんて、純粋だった中学生以来なかった事だけど、このレビューを書いていて、涙目です。
少しずつ積み上げられてきた山科くんの魅力が、最終話で最高潮になって、穏やかなラスト。
心動かされ、感動しました。
『GIFT』のタイトル通り、山科くんが神様から貰ったGIFTから、読者も何か暖かいものを貰えると思いました。