山科君の「ちぐはぐさ」がクラスに嵐を呼び込んで

個人的に合唱コンクールという学校行事が大好きで。
絶対クラスの中で喧嘩が勃発するんですよね。
それぞれ合唱コンクールに向かう姿勢も能力も違う。頑張りたい子が掲げる大義名分と、「ガチ」にはなれない、なりたくない子の言い分。
歌が苦手な子と、もっとうまく歌えないと納得できないという子。
それでも彼らは一つのハーモニーを作り出さなきゃいけない。
違う視線で別の方向を向いている者同士が、一つの音楽を作り上げなきゃいけない。

「フツー」のクラスでさえ衝突を繰り返しながら合唱コンクールに向かっていくというのに、この『GIFT』の主人公みさきちゃんのクラスには「フツーじゃない」男の子がいた。

山科君。
彼は「空気が読めない」し、部分的に異様なほど能力が突出している。ちぐはぐな彼の存在は、教室に嵐を呼び込んで……

力みのない滑らかな文体と、素人にも熱が伝わる吹奏楽部の演奏の描写、何より飽きさせない物語の展開で、最初から最後までよどみなく楽しみました。

読後タイトルの「GIFT」とはなんだろうと振り返ってみて。
作中で語られていることはもちろんですが……
クラスに嵐を持ち込んでくれた彼の存在自体が登場人物全員にとっての「GIFT」だったのだと、勝手に考えた次第です。

うん、いや、ごちゃごちゃ語ってしまって申し訳ない。言いたいのはただ一言。

「この作品、面白いから読んでみて!」

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