-2-「町内会のラジオ体操をしにいくの」
②
「そういえば、そんな感じで
「いいじゃない。これから
「イベントって‥‥」
起きたら綺麗な女性が隣に寝ていたら、
「ところで、ヒカル。朝ご飯も食べずにドコに向かっているの?」
「ラジオ体操だよ。町内会のラジオ体操をしにいくの」
「ラジオ体操? なんで体操しにいくの?」
「毎日行けば、ご褒美として図書カードが貰えるの。今度こそ図書カードを貰うんだ!」
前回の夏休みではヒカルは七日目で寝坊してしまい、
「なるほどね」
「魔女さんも、ラジオ体操に参加する?」
「まさか。
そう言うや、魔女はフッとこつ然と姿を消した。
「ま、
辺りを見渡しても、どこにも姿は見当たらなかった。
ヒカルは相手が本物の魔女だということを再確認して、
ヒカルが住む町内には、かなり広い空き地が存在していた。
普段は駐車場として使われており、数台の車が止められている。そこには既に数人の子供と大人が集まっていた。
一人の年配の女性が音頭を取り、朝のラジオ体操の準備をしている。
まだ、ラジオ体操が始まらないようだ。
ヒカルは大きな
「あ、ナツキちゃん」
ショートカットで後ろ髮が反り返っている女子‥‥水原なつき(みずはらナツキ)。ヒカルのクラスメートで幼なじみの子だ。
卒業式の日に保健室に担ぎ込まれた友達のランドセルを持っていた女子である。
「おは‥‥」
「あ、ヒカル。ねぇ、トッティを見なかった?」
ヒカルの挨拶も言い終わらぬ内に訊いてきた。
「とっ…とってぃ? ああ、ナツキちゃんところの犬だよね」
「そう! そのトッティよ。それでトッティをここに来る途中とかで見なかった?」
先ほど魔女と共に道を歩いていた時に銀色の毛並みの猫は見たが、犬らしきものとは
「う、うん。見なかったけど‥‥どうしたの?」
「実はトッティがいなくなったのよ」
「いなくなった?」
「昨日まではいたんだけど‥‥。今朝起きて、いつもの朝の散歩に行こうとしたら、トッティがいなくなっていたの」
「それって、逃げ出したの?
「ちゃんとしていたけど、首輪を抜けたらしくて。本当は探しに行きたいんだけど、お母さんが代わりに探すからと言って、私には体操に行ってこいと言うし‥‥」
「でも、犬って、自分の家を覚えているって言うし、お腹が空いたら戻ってくるんじゃない?」
「だと、良いんだけど‥‥」
犬(トッティ)を案じるナツキに、ヒカルが何か声をかけようとした時、
「はーい。みんな並んで。体操を始めますよ!」
年配の女性が大声で集まった子供たちを整列させると、ラジカセの再生ボタンを押した。
ラジカセから古めかしく馴染みの音楽が流れ始める。
女性は音楽に合わせて身体を動かし、ヒカルたちもその動きを真似て体操を行う。
しかしナツキは、その動きに加えて首の運動をしているかのように、キョロキョロと辺りを見回している。
おそらくこの時でも逃げ出したトッティ(犬)を探しているのだろう。
体操が終わり、参加したことの証明であるスタンプを貰うため列に並ぼうとすると、一目散に駆け出したナツキが一番乗りでスタンプを押して貰った。
「あ、ヒカル。もし、トッティを見かけたら捕まえておいて。それか、すぐに私に連絡をちょーだいね。お願い!」
「う、うん‥‥」
「それじゃーね!」
そう言い終えるや
おそらくこれからトッティを探しに行くのだろう。
「見かけたら捕まえておいて、か‥‥」
「あら? 犬探しにノリ気じゃないわね」
何気なく
「わっ! ま、魔女さん、いつのまに‥‥。というか、なんで知ってるの。犬探しのことを?」
「それは私が魔女だからよ」
茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべ、舌をペロっと出した。
答えになっていないような返答だったが、なんとなく納得するかのようにヒカルは
「う~ん、実はボク、犬が苦手なんだよね。それに犬が苦手になったのは、ナツキちゃんの犬の所為だからね」
「あらまぁ! それはご
お悔やみの言葉をしているものの、魔女は不敵の笑みを浮かべていたのであった。
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