2日目 行方不明
-1-「ついさっき、知り合いになったとこよ」
①
午前七時。
部屋に目覚まし時計のけたたましい
「うんにゃ‥‥」
ヒカルは目覚まし音を止めようと手を伸ばすと、
――ふにっ♪
手に柔らかい
寝ぼけ目で前を見ると、ふくよかな女性の胸の谷間が眼前に広がっている。
きめ細かな柔肌は白く透き通っていて、かすかな
その方へ顔を向けると
「‥‥うわわわわわっ!!!!!」
思わずヒカルは大声を上げ、飛び起きてしまった。
「ま、ま、
ヒカルの
「もう‥‥。なによ、大きな声なんか出して」
魔女が着ているピンクの
「な、なんで魔女さんがここにいるの?」
「あら? 昨日のことを、もう忘れたの」
「え? えっと‥‥」
ヒカルは魔女が家にやって来た昨日を振り返った。
◆◆◆
「マギナさん、あそこが‥‥あれ?」
ヒカルの家の前に来た時、魔女はこつ然と姿を消えていたのだった。
消えた魔女が気になりつつも、とりあえずヒカルは家の
「遅かったわね。また洋介くんの家でゲームばっかり
「え?」
ヒカルが後ろを振り返ると、そこにはどこかに消えていたはずのマギナが立っていた。
「え、あ、この人は‥‥」
自称‥‥いや、本物の魔女である魔女を、どうやって紹介すれば良いのか
「お久しぶりですね。
「覚えてませんか? そうですよね、もう十年前になりますかね」
十年前とはかなり昔だ。ヒカルすら生まれていない。
その時は結婚したばかりと法子が思い返していると‥‥思い出した。
「‥‥あっ! もしかして、ヨーロッパで私たちを助けてくれた! 確か名前はマギナちゃん」
「そうです、それです!」
「うわー、久しぶりね! どうしたの?」
母の反応にヒカルは驚きを通り越して、口をあんぐりと開いて
母と
今から十年ほど前、つまりヒカルが生まれる前に両親は新婚旅行でヨーロッパに行ったことがあった。
そのヨーロッパで財布を落としたり、道に迷ったり、
生粋の日本人である両親のにわか英語ではどうしようもなく、途方に暮れていた時に幼かったマギナと出会い、助けて貰ったという。
言うならば
ヒカルがそのトラブル話しを聞くのは初めてだった。
「ねぇ、魔女さん。お母さんたちと知り合いだったの?」
「ついさっき、知り合いになったとこよ」
「ついさっき? 魔法で何かしたの?」
「まぁ、半分正解かしら。さっき過去に行ってきて、ちょっと改変してきたの」
「カ、カイヘン?」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げるヒカル。
「直接、記憶を魔法で書き換えるのも有りだったけど、
「え、えっと‥‥。まっ、いいか」
さらっと凄い内容を言い放っていたが、心身共に疲れ果てていたヒカルの
その日、
「あの小さな女の子が、こんなに大きくなって。いや~、あの時は本当にありがとう!」
父もまた魔女を覚えており、感謝の言葉とともにジュースを魔女の空いたグラスに注ぐ。
「夏休みの間は日本にいるの?」
母がおかずの一品を魔女の近くに置きながら訊ねると、魔女はヒカルの方を横目で見つつ、
「ええ、休みの間は日本を
「へーそうかい。
「カプセルホテルに泊まろうかと。ただ、お金を節約したいところですから‥‥日本は
「おいおい、若い女の子が野宿なんて」
父と母は
「そうだ。それだったら、我が家に泊まりなさいよ。部屋も余っているし。いいわよね、あなた?」
父が「ああ」と
「え、良いんですか?」
「私たちの命の恩人だからね、遠慮することはないよ。ここを自分の家だと思ってくれよ」
父たちの申し出に、魔女はニッコリと笑い。
「本当ですか! すっごく助かります!」
「いえいえ。だったら部屋を片付けないとね。だけど荷物が結構あるのよね。そうだ、大変申し訳ないんだけど、片付くまで今日はヒカルの部屋で寝てくれないかしら」
「えっ!」
突然の母の申し出にヒカルが驚くも、
「ふふっ。今夜はよろしくね、ヒカル」
その
こうして夏休みの期間、ヒカルの家に
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