第4話 血は受け継がれる

 曹操と劉備は禁中へと伺候しこうした。


 ※そうそーとりゅーびがえらいヒトのところへごきげんとりにいったってことだよ。

  わかったかな?

  わかったならさっさとつづきをよみなさい。このどくしゃさまどもが。


 ―――帝の周りを囲む無能そっきんたちは、ひそかに眼を見張った。


「ひそひそひそひそ、異例異例。」


「ひそひそひそひそ、意外意外。」


「ひそひそひそひそ、変事変事。」


 一般ピーポーにモジャモジャと毛が生えた程度の劉備が禁中へと足を踏み入れたというだけでも驚きなのに、拝伏する彼に帝が声をかけたモノだから、それはもうサプラーイズ!であった。


「―――劉備とやら。此度の戦い、曹操と共に見事な働きであった。」


「はっ!!」


「・・・でだ。ちんはそちのことを良く知らぬわけだが、そちの先祖はいかなる者か?」


 この帝の問いに、劉備は呼吸をおき、襟を正して答えた。


しんが祖先は中山靖王ちゅうざんせいおう(=劉勝りゅうしょう)の後胤こういん(=子孫)、景帝けいてい(=劉啓)の玄孫げんそん(=孫の孫)にあたり、劉雄りゅうゆうが孫、劉弘りゅうこうの子でございます。」


 ルビを打つのがくっそ面倒であった劉備の先祖紹介を聞いた帝は、驚きのまなこを見張って、


「では、我が一族の者ではないか。・・・だれか、系譜けいふを持ってまいれ。」


 と、すぐに側近の者に朝廷の系譜を持ってこさせた。

 そして「読みあげてみよ。」と、帝は命じ、側近は命令通りに読み始めた。



“漢の景帝けいてい『劉啓』は嫁たちとの子作りにて十四人の子を生む。

 劉啓の子の中山靖王ちゅうざんせいおう劉勝りゅうしょう』も嫁たちとHして子をたくさん作る。

 劉勝の子の陸城亭侯りくじょうていこう劉貞りゅうてい』も嫁とニャンニャンして子を残す。

 劉貞の子の沛侯はいこう劉昂りゅうこう』も嫁たちとイチャイチャして子を繋ぐ。

 劉昂の子の漳侯しょうこう劉禄りゅうろく』も嫁たちと夜遊びにて子を産ませる。

 劉禄の子の沂水侯ぎすいこう劉恋りゅうれん』も嫁たちとあんなことやこんなことをして子をはらませる。

 劉恋の子の欽陽侯きんようこう劉英りゅうえい』も嫁たちと・・・・・・”



 朗々と代々の先祖の名が耳を打ってくる。

 先祖の名を聞いて劉備は目頭が熱くなった。


『家運なく没落して、むしろを打って貧しさをしのぐ日々。』


 その日々が今も劉備の胸をつまらせる。

 しかし、今、偉大な先祖の名が読み上げられる度に、彼の体を流れる血が熱くなっていく。


(自分はまだ小物。しかし、私の体内には偉大な先祖の血が流れている。)


 そう思うだけで、劉備は血と共に、心まで熱く燃え上がるのであった。

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