第17話 わかりやすく伝えること

 ほんのり場面変換します。


『承董、帝に呼び出される。』


 この行動は、その日の内に曹操の耳に入っていた。


「エマージェンシー!エマージェンシー!これは危険な香りがする!すぐに宮廷に向かうぞ!!」


 報を聞いた彼は、部屋着から礼装へあっという間に着替えると、下僕しもべたちを従えて、風を斬るように車を走らせた。


 で、


 禁門にかかると、


「帝はどこの閣においで遊ばしだ!オラァ!!」


 と、家臣をして、衛府のに問わせた。


「ここを左に曲がって、突き当りを右に行き、三つ目の十字角を左に行くと見せかけ、まっすぐに行かずに右に曲がりながら直ぐに左に行き、後方を確認しながらピョンピョンはねて階段を上がり下がりした所に帝はおりまする。」


「なるほど。つまり・・・」


「帝は功臣閣におのぼりになっておりまする。」


「うむ。とてもわかりやすい道案内感謝致す。」


 吏より、簡潔かつ分かりやすい道案内を聞いた家臣は大将に同内容を述べた。

 報を聞いた曹操。

 彼は「やはりか・・・」と言わんばかりに顔を強張らせると、足の運びを急がして、せわしげに禁中へと向かったのであった。


 ―――と折も折。


 南苑の中門では、ちょうど今、霊廟より退出した承董がいた。


(う~む・・・。あの帝の態度、それにこの玉帯。絶対に何かあるな。)


 彼は今日の出来事を思い返しながら歩んでいた。


(・・・この事は曹操にばれぬようにせねば。)


 そして同時に思い浮かんだ曹操への警戒。

 しかし、彼のこの思いは直ぐに打ち砕かれることとなる。


 人生とは無情だ。ああ、無情である。


 上手くいくことが人生であり、上手くいかないことが人生である。


 今日の彼は上手くいかない日であったのだろう。


 ブツブツと独り考え事をしている彼に、男は、優しく、丁寧に、敬意を払って声をかけた。


「おやおやおやおや、承董殿。こんな所にお出かけ遊ばせとは・・・何か急用でもおありでしたかな?」


 声を掛けたのは、もちろんこの人。


 曹孟徳であった。



※最近、更新が遅くて申し訳ございません。

 身辺がガチで忙しいので、更新が厳しい状況が続いております。

 執筆を止めるつもりはありませんので、ろくろ首のように気長に更新を待ってもらえればと思います。

 繰り返し、お詫び申し上げます。

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