物語の終わり――懐旧切々

 かたじけなくも明君を輔弼ほひつして政道を正し、民草を癒し春秋を経るも、鼓腹撃壌こふくげきじょうに遠く及ばず、まこと慙愧ざんきの念に堪えざるなり。


 而れども、東市朝衣とうしちょうい絶えて血刀けっとう乾き、文武百官は殿前に粛然たり、また元宵の観燈かんとう、清明の踏青とうせい、至る所に国人こくじんの遊び、其の歓楽尽きざるを見れば、いささかなりとも青雲のこころざしを遂げたりと謂うべきか。


 朋友ほうゆう既に道山どうざんに帰すと雖も、猶お魂魄こんぱく此の地に留まれり。対酌せんと欲して楓林ふうりんれば、唯だ孤鹿ころくのみ余に従う。白馬を御して蒼海を巡り、彼人かのひと蹤跡しょうせきを尋ねてあまねし。清月せいげつ笛声てきせいを聞けば、懐旧の念未だまざるなり。


        『天朝名臣言行録』巻九・烏翠・柳承徳



                             【 了 】



〔付記〕

ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

なお、本作の外伝もございます。

1.『還魂記』本作終盤を別の視点から描く

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883465705

2.『戦場を渡る蝶』本作に登場するサウレリと弦朗君の出会いと別れを描く

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884158914

3.『古歌』本作でレツィンを送ってきたサウレリと、弦朗君の再会。『蝶』の後日譚。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886036265

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翠浪の白馬、蒼穹の真珠 結城かおる @blueonion

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