守るべきものは、人それぞれなのだろう。この外伝に出てくる貴公子、光山弦朗君には、はたしていかほどの痛みが、苦しみが、これまでに振り掛かってきていたのだろうか。
「翠浪の白馬、蒼穹の真珠」本編にては、あくまで「よそもの」からの眼差しでしか知ることができなかったくに、烏翠。それが、他ならぬ当事者の目を通して語られる。そんなん歴クラ狂喜乱舞、である。
人為甚だ凶猛なる王、王のそばで、“断罪”をなす若き宰相、呉一思。うごめく悪意に、それでもなお気高く立つ弦朗君。
レツィンを暖かく見守るその眼差し、その強さの理由を目の当たりとさせてくれる好編である。また同時に、烏翠に重くのしかかる影、その濃さをも痛感させられる。
主人公だけでなく、その周りを固める人物に魅力があるのが、面白い話だと思います。
しかし、あまり色々な人物のことを描くと、ブレてしまうのが物語の常です。
それを解決するのが「外伝」です。
前置きが長くなりましたが、これは、『翠浪の白馬、蒼穹の真珠』という長編小説の外伝です。
本編を読んだ人は迷わず読んで下さい。
絶対面白いです。あの事件をあっち側から見ているからです(←概要をご覧下さい)
が、本編を読んでない人にはどうしたらいいのでしょう?
やはり、読み返してみましたが、「先に本編を読んで下さい」というタイプの外伝だと思います。
でも、私が言いたいのは1行目です!
この外伝に出てくる、弦朗君という人は、間違いなく主役クラスの人物です。
部下思いな上司でありながら、王族としてとても重いものを背負っています。
そして、宿敵感溢れる呉一思という悪そうな男……!
こんな人々が控えており、作者もいずれ弦朗君主役の話を書きたい、とエッセイを書いておられました。
ええ!書いて下さい!!!
ということで、本編未読の方、まずは本編を読んでみて下さい。
本編に「上司」や「友人」として出てくる人物が、物語を進めるための駒ではなく、作者の深い愛情によって造形された、血の通った人間であることを感じながら――
きっと、ここまで来たくなるはずです。