烏翠、その堅牢なる籠

守るべきものは、人それぞれなのだろう。この外伝に出てくる貴公子、光山弦朗君には、はたしていかほどの痛みが、苦しみが、これまでに振り掛かってきていたのだろうか。

「翠浪の白馬、蒼穹の真珠」本編にては、あくまで「よそもの」からの眼差しでしか知ることができなかったくに、烏翠。それが、他ならぬ当事者の目を通して語られる。そんなん歴クラ狂喜乱舞、である。

人為甚だ凶猛なる王、王のそばで、“断罪”をなす若き宰相、呉一思。うごめく悪意に、それでもなお気高く立つ弦朗君。

レツィンを暖かく見守るその眼差し、その強さの理由を目の当たりとさせてくれる好編である。また同時に、烏翠に重くのしかかる影、その濃さをも痛感させられる。