目を閉じて浮かぶのは、格調高い装丁の本。

少女が本を抱えて、砂の道を走って来ます。
ねえ、お父様。 このご本の中の 「林檎のお話」 を読んで。

いい子にしていられるかな。
古い匂いのする厚い本をぱらっとめくると
ラテン語で書かれた文字と、真っ赤な林檎の挿絵。

いつかこの子も、禁断の果実を食べるのだろうか。
髪を撫でながら、そのばら色の頬を見つめ、父は物語を読む。

運命というものがあるのなら
いつか誰かと結ばれるのだと、憂いながら。

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