概要
帝国の果実、林檎
ローマ統治下のブリテン島で、ブリトン人の少年アンテドリグは、黒人との混血の少女ヤムシラと出会う。林檎がイギリスに初めてもたらされた頃のお話。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!世界史の翼
林檎……といえば、なんといっても最初に思い浮かぶのはアダムとイヴで、西洋史の中では頻繁に出てくるモチーフですが、あれって厳密には禁断の果実で、それを食べて楽園を追放されたんだったっけ。
つまりは果実といえば林檎が思い浮かぶくらい、西洋ではポピュラーなものなのでしょうが、その林檎だって最初からどこにでもあったわけではない。
本作品は、林檎がローマからブリテン島に伝えられた頃の話、ということですが、アダムとイヴとは逆に、林檎を通じての瑞々しくも甘酸っぱいボーイミーツガールという切り口もいいですね。当時、本当にこんな出会いがあったのかもしれないと、読者の想像の翼を広げさせてくれます。
そしてラスト…続きを読む - ★★★ Excellent!!!豊穣を想わせる林檎は時を超え
繊細でやわらかく、何よりも豊かな物語であった。
少年と少女の出会い、林檎の僅かな酸味と鮮烈な甘みから、1600年を超える時の流れを、作者様はたった4000字程度の中に描かれた。
正直に言えば言葉も出ない。
同じ(いや、同じだろうか?)物書きとしてただただ圧倒され、驚嘆した。
それでも暗い失意の谷底に落とされなかったのは、やはり物語に溢れるやわらかさのお陰であろう。
決してぬるい物語ではない。歴史を遡れば当然であろう。
それでも優しい温もりを感じるのは、作者様が切に平和を願っているからではなかろうか。
――ああ、この辺りで止めておこう。
このまま思うままに書いていけば地球と林檎と人の和の…続きを読む