この飛翔感。

日本語で読める英国舞台の歴史小説は多々あるが、ローマ支配下のブリテン島というのは珍しいのではなかろうか。
林檎を間に挟んだ、少年と少女の出会い。二人は会話を交わし、林檎の種を植える。いちどは遠のいた二人が再会し、そして――。
作者の深い歴史的知識に裏打ちされ、林檎の芳醇な風味が凝縮されたような一篇。特に、途中で清教徒の時代に一気に飛ぶときの飛翔感たるやただごとではなく、読み返すたびに心が震える。

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