世界史の翼

林檎……といえば、なんといっても最初に思い浮かぶのはアダムとイヴで、西洋史の中では頻繁に出てくるモチーフですが、あれって厳密には禁断の果実で、それを食べて楽園を追放されたんだったっけ。
つまりは果実といえば林檎が思い浮かぶくらい、西洋ではポピュラーなものなのでしょうが、その林檎だって最初からどこにでもあったわけではない。
本作品は、林檎がローマからブリテン島に伝えられた頃の話、ということですが、アダムとイヴとは逆に、林檎を通じての瑞々しくも甘酸っぱいボーイミーツガールという切り口もいいですね。当時、本当にこんな出会いがあったのかもしれないと、読者の想像の翼を広げさせてくれます。
そしてラストの、林檎が更に遠くへと伝えられていくところ。こういう歴史視点は、世界史ものの醍醐味。主人公とヒロインの物語が収束したところへ、ラストで更に大きく羽根を広げる開放感のような読後感をもたらしてくれて良かったです。

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