噛ませ役は大変だな、やれやれだぜ

この作品の主人公は弱いです。
いや、そりゃ世の中には最弱を謳いつつも実際にはなんかすごい能力で無双するような主人公も多々存在すると思いますが、本作品の主人公は本当に弱い。
なぜなら、やられ役として負けが確定しているから。噛ませ程度にしかならない。
そんな弱いヤツが主人公でどうすんのよ、という感じではありますが、そこを面白く描いているのが本作品の楽しみどころです。

物語には主人公以外にもそれぞれ役割を持ったキャラが存在するもので、ヒロインであったり、ヒロインの中でもメンヒロではない負けヒロインがいたり、主役にやられる役であったり、ヤバいラスボスであったり、トラブルメーカーであったり、ただの雑兵であったり、そういったキャラたちが上手く絡み合ってこそ面白い物語となるものです。
本作品では主人公以外にも多数のキャラが登場しますが、そのキャラたちがそれぞれ明確な役割を持っているので、とてもリーダビリティが良い。
キャラの持っている役割が強固であれば、それは実質異能バトルでもあります。たいしたことの無いと思われていた能力が意外なところで役に立つこともあるかもしれない。
キャラクターたちはちゃんと役割を果たしているんだけど、それでいてありきたりにならないとろこがすげえ。

負けとは何なのか。逆に言えば勝ちとは何を以て勝ちとするのか。弱さとは何なのか。逆に言えば何を以て強いとするのか。そこに向き合って知恵を巡らし努力する主人公の姿が読者の心にしっかり噛みついて離さないということになるでしょう。噛ませですし。