神様からクズのやられ役に設定されてしまった俺、負けヒロインと同盟を組んで死亡フラグを回避します
でんでんむし
やられ役主人公(クズ君)と負けヒロイン(腹黒ちゃん?)
プロローグ やられ役(クズ)に設定されてしまいました
「おめでとうございます! あなたは『やられ役』に選ばれました♪」
「…………は?」
目の前にいる神様に告げられて、思わず睨み付けてしまった。
「やられ役ってどういうことだよ」
「うわっ。睨まれた! なんて卑屈な目だ! その目つきは、まさにやられ役ですね!」
「いや、聞けよ」
ちなみにこの神様、見た目は美少女である。俺が想像していた神様とは遥かにかけ離れていた。
表情も豊かで、神々しさの欠片もない。こんなのが神様でいいのか?
この町の名前は神ノ町(かみのまち)。ここは特別な町である。
どこが特別かというと、まず神様が存在しているあたりが常識外れだ。
そしてこの神ノ町には、いくつか特殊なルールが存在する。
「はい! 特殊ルールその1。全ての町人は、中学校の卒業と同時に、神様から『役割』を与えられます。皆さまは、その『役割』通りに生きなければなりません」
俺の心の中を読んだのか、目の前の神様が説明してくれた。
ここで言う『役割』とは、『主役』や『ヒロイン』など、漫画なんかでよくみられる物語での役割のことだ。神様はどうやら、そういった娯楽が好きらしい。
この役割のことは『属性』と呼ばれている。
例えば『主役』という属性を与えられた人間は、何をやっても全てうまくいくようになる。完全にこの世界の勝ち組となれるのだ。
『ヒロイン』という属性を与えられた女の子は、どんな恋でも確実に成功する。幸せな未来は確定していると言っていいだろう。
もちろん、『主役』と結ばれることも可能だ。
だが……
「や、やられ役……」
俺に与えられた属性は『やられ役』だった。
やられ役……つまり、何をやっても負けるという属性だ。
「マジで俺の属性はやられ役なのか?」
「はい! マジです♪」
屈託のない笑顔で笑う神様。ちょっとイラっときた。
「ひゃあ!? 私に睨まれても困ります! 私はあくまで代理ですから! 決めたのは神様ですから!」
この美少女は神様ではなく代理だったらしい。まあ、どうでもいい。
それより抗議したいのは、この結果についてだ。
俺はこれでも努力家だ。特に自分磨きには相当の時間と労力を重ねてきた。
友達も全く作らずに、ひたすら自分を磨き続けた結果、俺は誰にも負けないほどのスペックを獲得した。
そんな俺にふさわしい属性は、当然『主役』だろう。
それなのに、俺に与えられた属性がやられ役だと? ありえねーよ。
「どうして俺がやられ役なんだ!」
「あなたがやられ役に選ばれた理由ですか? 少々お待ちください」
そうして目の前の神様(代理)は手帳のようなものをめくりだす。理由を調べているようだ。
属性は本人の性格や、これまでの功績で決まる。だからこそ、余計に納得がいかない。
「ふむ、確かにあなたはよく頑張っています。とても努力家なのですね」
「ああ、そうだ。だから、俺がやられ役なんておかしい。やはりこれは何かの間違い……」
「おや? でも、友達が一人もいませんね」
その瞬間、今度はピシリという音を立てて、俺の心にヒビが入った。
「そうか! あなたは自分磨きに専念して友達を作らなかったわけではありません。その性格が原因で友達が一人もできないから、自分磨きしかやることが無かっただけなのです!」
さらに手帳のページをめくって、俺の黒歴史を暴いていく神様代理。
「だから主役となって、その特性を使って無理やり友達を作ろうとしたのですね。うん、やられ役にピッタリの性格です。なんというか……クズ?」
「クズ!?」
神様からクズだと認定されてしまいました。しかもピッタリだとか言われました。
「あ、ごめんなさい! 私は神様の眷属なので、嘘がつけない性質なのです。真実を的確に言ってしまうだけです。だから、気にしないでください!」
「余計に気にするわ!」
俺がクズのやられ役というのが紛うことなき真実だってことじゃねーか! ショックだよ!
「落ち込まないでください! やられ役なんて、とてもレアな属性です! 歴代でもこんな激レア属性に設定されたのはあなただけですよ! 激レアって、嬉しいですよね?」
「嬉しくねーよ!」
そんなわけで、最強のスペックを持つはずの俺は、『主役』ではなく『やられ役(クズ)』として生きていくことになりました。めでたしめでたし。
……全然めでたくねえっっ!
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