豊穣を想わせる林檎は時を超え

繊細でやわらかく、何よりも豊かな物語であった。
少年と少女の出会い、林檎の僅かな酸味と鮮烈な甘みから、1600年を超える時の流れを、作者様はたった4000字程度の中に描かれた。

正直に言えば言葉も出ない。
同じ(いや、同じだろうか?)物書きとしてただただ圧倒され、驚嘆した。
それでも暗い失意の谷底に落とされなかったのは、やはり物語に溢れるやわらかさのお陰であろう。

決してぬるい物語ではない。歴史を遡れば当然であろう。
それでも優しい温もりを感じるのは、作者様が切に平和を願っているからではなかろうか。

――ああ、この辺りで止めておこう。
このまま思うままに書いていけば地球と林檎と人の和の丸さ等にまで述べ、きっと書き直したい衝動に駆られてしまう。

このような名作を描いてくれた作者様に最大級の賛辞を贈りたい。

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