ローマがかつてそうだったように

慎ましやかな節度を持った文章の美。固有種の幼さを外来の豊かな(そう見える) 文化や植物が抱き込んでいく過程を、絶妙のバランスで書かれています。かつての初期ローマは、少年の属するブリテンがそうであったように質素で堅実、保守的な民族でした。それがブリトンに進出する頃はヤシムラの容貌が示すように多彩な民族と土着の文化を内包し、広がっていきます。少ない文字数の中にリンゴの赤い色を際立たせる構成力が光ります。拡大したローマの宗教の反動として現れるピューリタン。その世界拡大も示唆して、美しい物語は終わります。「リンゴは尻から腐っていく」という格言をひとまずは横において、読みかえしたくなる物語です。

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