Re : Alice
猫田ヒラ社員。
第1章 play the tea party
第1話アリス始動
異形の獣。人々はそれを『魔獣』と呼ぶ。
突如として飛来してきた魔獣の脅威が、冷めやらぬ近年。やがて。
人々は、天災として畏れ、一部の国では神として崇めていた。だが。
帝国の学術研究院では、時空の歪みから生まれたとされていた魔獣が、実は、人為的なものが関わっていたと発表し、世界中を震撼させた。そして。
1人の天才が、人類に抗う術をもたらした。
Digitalize《デジタライズ》
【2値化】
Virtualization《ヴァーチャライゼーション》
【仮想化】
Intelligence《インテリジェンス》
【知識化】
Core《コア》
【中枢化】
System《システム》
【機構化】
略称、【D.V.I.C.S《デバイス》】これの開発により、魔獣討伐が飛躍的に向上する。
開発初期のデバイスは、要塞型の大型のもので、実用的ではなかったが、ナノマシーンに組み込む事に成功したことにより、魔法の術式展開速度が向上し、再展開までの時間が短縮した。
これまで魔法の発動は、魔道書や、魔導師の口伝だよりだったものが、【D.V.I.C.S《デバイス》】の小型化の成功により、登録、演算、解析、解凍、保存し、固定の
ほぼ無演唱状態での発動が可能となった。そして。
各国の首脳陣は『世界安全保障会議』を開き。そこで。
優秀な担い手となる人材を募り『円卓の騎士』通称、『ロイヤルナイツ』という警察及び軍事機構を設立した。そして。
そのもの達を『英雄』と呼び、国民からは賞賛された。
多くの月日がながれ、軍事利用目的で開発された【D.V.I.C.S《デバイス》】が、さまざまな技術開発が行われ医療機器や生活用品に転用され、国民の生活を大きく向上させた。
因みに【D.V.I.C.S《デバイス》】のコアに相当する部分は、セキュリティの関係上、完全なブラックボックスになっており、解除する為のワードの組み合わせは、1億パターン以上とされている。そして。
ここにまた、新たな『英雄の卵』達が、羽ばたこうとしていた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
___________________
___17年後_
ここは、グリムワール帝国学術研究都市イングラム。そして。
担い手の育成機関である、私立オズウェル魔法学園。
そこの学生寮には、主人公、アリス。本名.アリス•オズウェルと、ドロシィ•オズウェルの双子の姉妹が暮らしていて有意義な学生生活を送っていた。
ジリリリリィ!…とメルヘンチックな部屋の目覚まし時計の音が朝を知らせ、部屋の主を覚醒へと促す。
「うん、うぅ」
……お姉…ちゃん…起き…て…ア…リス…
お姉…ちゃん…は…や…く…
「ドロシィ…後五分…」
ベッドの上で、むにゃむにゃ、ごろごろ
その姿を見たドロシィは、ぶちっときて。
「起きろって‼︎言ってんでしょうが!ドスン‼︎」
ふざけんなという感じで、姉であるアリスの腹に杖型デバイス《スケアクロウ》を部分展開し、ボディーブローをかますドロシィ。
「ごはっん‼︎…」
ボディーブローを受けた、アリスの身体が、くの字に曲がり。
「やっと起きた‼︎」
むくれっつらのドロシィが両手を胸の前で組み仁王立ちしていた。
「いっつつ…朝からハード過ぎやしませんか?」
「起こしても、起きないお姉が悪い!」
「アハハ、すんません」
「はぁあ、早く着替えて!学園行くよ!」
というわりには、姉の着替えを手伝うドロシィの姿は、執事か、メイドのそれだ。
「ほーい」
ところ代わって、ここは、グリムワール公爵家 地下訓練施設。そこで早朝模擬演習をしているのが、公爵家の姫君 ハーテイア•フォン•グリムワールである。
その容姿は、黒髮で、丁寧に前髪が切り揃えてあり、ショートヘアが室内のライトに照らされ、とても美しく輝いていた。女性らしく発達した体は、見るもの目を奪い、魅了してしまうほど、美しいプロポーションをしていた。
「姿勢を正し…狙いを定め…ポトリと落とすように…」
訓練所に静寂が包み込み、狙撃銃型デバイス《ドラグノフ》を構える姿は、ベテランスナイパーのようだ。そして。
人差し指でリズムを整え発砲する。
タン!
タン!
タッタン!
カランと薬莢がばらばらと床に落ちた。そして、アイグラス、耳当て、と順に部分展開を解除した。そして自分のスコアを見て、どこか満足気な表情をして見せた。
「お見事です!ハーティアお嬢様」
拍手をしながら、黒塗りの執事服を身に纏い、ナイスミドルな男性が訓練所に姿を見せた。
「ふぅ、セバスですか。朝から私に、なんのようですの?」
セバスと呼ばれた執事は、ハーテイアに一礼した後、今日の予定を話し出した。
「はい、ハーティアお嬢様。朝食の準備が整いましたのでお伝えに、それと、そろそろ学園へ行く時間かと…」
「あら、もうそんな時間ですの?」
「はい、ハーティアお嬢様」
「分かりましたわ、セバス、行きますわよ!」
「はい、ハーティアお嬢様」
気品溢れる立ち振る舞いは、さすがご令嬢といったところであろう。因みに、ハーテイアには、重度のシスコン兄、名を、ジャック•フォン•グリムワール13世という人物がおり、最近の悩みは、兄が妹ばなれしてくれない事である。
____________________
少女は、走る。森の中を。愛犬と一緒に走っ
ていた。肩で息をし、普段は、綺麗なウェーブがかかっているだろう、ショートヘアが乱れ、枯れた葉や折れた枝木が絡まっている事すら気付いていないぐらい緊迫している状況が伝ってくる。
「はぁ、はぁ、うっ‼︎…はぁ、はぁ、…」
「ウォン‼︎」
「ありがとう、ウォルフ!」
愛犬を優しく撫でる少女。そして、再び走り出す。
(追えぇ‼︎こっちだ!)
(逃がすな‼︎)
何故なのか分からないが、何者かに追われているようだ。
人が追われる理由などいろいろあるが、おそらく、追っ手側の不利益になるような事をしたのだろう。
「はぁ、はぁ、なんで…私が…」
「クーン?」
「大丈夫だよ…早く逃げよウォルフ!」
「ウォン‼︎」
(どこ行きやがった!あの娘‼︎)
(探せ野郎共‼︎)
(ガキ、一人じゃそう遠くは、行けねはずだ!)
「は、早く、叔母さまの所へ、行かないと!」
「ウォン‼︎」
「え?……きゃ!ドサッ!」
太い幹に足を取られる少女。
「ガルルルゥ‼︎」
主を守ろうと前へ出た、愛犬ウォルフ
「へへ、やっと追いついたぜ!クソガキ!」
「散々、手こずらせやがって‼︎」
「我ら教団の、秘密を知ってしまった以上、ここから、生きて帰れると思うなよ‼︎クソガキ!」
教団ということは、何処かの宗教団体の事だろう。やってる事は、山賊か、盗賊のそれだが、『神の名のもとに』と言って殺人を正当化してしまうのだから、便利な言葉なのだろう。そして。
追っていた男達は、タワールと呼ばれる武器を鞘から抜き少女を脅すように構える。
「い、いやぁーー!近ずかないでぇー!」
「ガルルルゥ‼︎」
主を守ろうと果敢にも、武器を持った男達に飛びかかり。そして。
「邪魔だ!糞犬!……ザシュッ!」
「キャン!」
「ウォ、ウォルフ‼︎」
血を流し、力なく倒れ伏す愛犬のウォルフ。そして、不敵な笑みを浮かべ、少女に近ずく。
「へへ、もうお前を、助けてくれる奴は、
もういねぇぜ…どうする?」
「御頭、殺す前に一発やっちまいましょう」
と腰を振りながら、仲間と思しき男性はリーダーらしき人物に提案する。そして。
リーダーらしき男性は、提案を了承し、下衆な表情で少女に近ずいた。
ズリ..ズリ..
ズズ…ストン…と恐怖のあまり、後ずさりし、木を背に腰を抜かす少女。そして、振り翳される『凶器』。
「い、いや…だ、誰か助けて!」
____________________
私立オズウェル魔導学園の学生寮玄関前では、慌ただしく着替えを済ませ双子の姉妹が姿を見せた。これが、いつもの2人の日常。
「お姉ちゃん!早く」
「ちょ、ちょっと待て…今行くから!」
「早く起きない!お姉が悪い」
…だ、誰か助けて…
「ん?ドロシーなんか、言った?」
「何も、言ってないけど」
「そ、そう?」
あれ?空耳だったか
なんか、嫌な予感がする…
「お姉!ボサッとしてないで行くよ!」
「お、おう…それじゃあ行きますか」
「ほら、早く…進級早々遅刻は嫌だ」
「ま、待てって‼︎」
そして、慌ただしく学園へ向かい、校門に『入学式及び新級式典』という看板にも気付かずに教室へと向かう双子の姉妹。これが、いつもの2人の登校の風景。
いつもと違うのは、今日が、入学式という事を。そして。
とある研究施設では謎の人物が、モニター越しに不敵に笑う。
「嗚呼、早く見たいです。愚かな人間共が、鳴き、喚き、許しを請いて、血反吐を吐きながら死んでいく姿が、フハハハハ」
こうして、彼女達の日常が崩壊する事を除いては。
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