第11話 公爵家でのあれこれ①
魔獣襲撃から一週間が経ち、高層ビルが建ち並ぶ、グリムワール帝国学術研究都市イングラム まさに、大都会という言葉が似合うほど、人が溢れていた。
道路は舗装され、行き交う乗り物は近未来を
人々は魔獣襲撃が嘘だったみたいに活気に溢れていた。ロイヤルナイツの貢献が大きいことは明白だ。
そんな、都会の建造を抜け、路地を入り、一際目立つ大きな屋敷が現れる。
「ハーティアさんの家…庭広っ!」
「
言わば高級住宅街 生活用品の入ったトランクを
「シャルちゃんようこそ我が家へ」
備え付けられているインターホンから、ハーティアらしき人物の声が聞こえ、門の鍵が
「セバスを向かわせたので、しばらく、そこでお待ちしていてください。」
『大型犬』を連れた『少女』が大きな荷物を抱え、敷地内に一歩踏み入れると門が閉まり、鍵が
そこは、まるで、都会とは思えない程樹々に覆われており、屋敷に続く道は、石畳みが敷かれており、なんとも言えない暖かな表情をしていた。
「うーん、空気が美味しい。」
美しく成長した、樹々が生い茂る森の中にいる錯覚にでもおちいったのだろうか。大きく深呼吸をするのである。
無理もない話しだ『少女』の周りにある樹々達は、職人の腕が
そこへ、屋敷へとつづく並木道の向こうから『大型犬』を引き連れた『少女』のもとへ、段々と近づく人影が見え始めたのである。
•・なんですかっ!あの、ダンディなおじさまは?!
彼女は、この家に仕えているセバスに気付くとこんな思いを彼に向けたのである。
「シャル =ロア • テディベアラ様 お待ちしておりました。」
手を伸ばせば届く距離まで近づき挨拶するセバス。
「はわわ!シャルでいいです!」
あまり経験がないようなのか、丁寧な対応に慌てふためくシャル。
「では、シャル様とお呼びさせて頂きます。」
彼の丁寧な対応は続く。
「
と紳士的な対応を見せ、手に取ろうとするのだが『大丈夫ですよ』と軽めに断りを入れるシャル=ロア•テディベアラ
「いえ!これは私の執事としての大事な勤め!
と
「お願いします。」
彼の働く姿勢に好意を持ち、そっと荷物を手渡すシャルであった。
「あのー執事さん?」
と何かやましい事が有りそうな雰囲気で訪ねるシャル。
「いえ、私のことは、セバスとお申しください。」
と紳士的に答えたセバス。
「はい、セバスさん..この子も一緒に居ていいですか?」
人見知りなのか、少し緊張が隠しきれずにいるシャルが連れてきたであろう『大型犬』を指し、許可を申し出したのであった。
「何と!極東狼ではありませか!」
まるで、童心に帰ったような表情を浮かべ驚きの声を上げたのだが、シャルには拒絶の反応に見え、
「はうわ!あ、あの子は、私の友達のウォルフと言いまして!決して人を襲うような子ではありません!!」
と慌てた様子を見せ、身振り手振りを使い安全である事を主張するシャルなのである。
「ごほん!失礼しました。シャル様。」
咳払いをするも、眼を輝かせ『極東狼』について語り出したのだ。
「遥か昔、ミズホ国全土に生息するっと言われていて、性格は大人しく、警戒心も強く『森の王者』とも呼ばれ、人にはなかなか懐きません!ですが、ミズホ国の先住民達は『極東狼』の子らを飼いならし、狩猟時のパートナーとしていた時代を経て、今は、警備用に訓練をし、その者を『テイマー』と呼び現在に至るまで、さまざまな分野で活躍するまでとなりました。ですが、近年ではミズホ国内でも『エゾシティー』と呼ばれる北国 その原生林に原初の姿で数頭が確認されるのみとなり準絶滅危惧種として保護されるまで数を減らしてしまいました…」
※この後、数十分ほど講義が続くので割愛します。飛ばして読んで頂いて大丈夫です。
シャルはシャルで、熱冷めやらぬ彼の姿に呆気に取られていたのだが、となりに居るウォルフはと言うと、少し首を傾げトコトコ歩いたかと思うと彼に近づいては体の匂いを嗅ぎ、マーキングと呼ばれる体をすり寄せる動きをし、彼の手を甘噛みし、ちろちろと舐めたのである。
※予防接種はしてあるのでご心配無く※
「うぐっ!」
セバスは、声をにならない声を上げるのだが、表情は心なしか嬉しいそうなのである。
「あのセバスさん?もし宜しかったら触ってもいいですよ!この子もの凄く人見知りなのか?なかなか懐かないんですが..セバスさんの事気に入ったようで!」
どうやら、セバスの熱弁に感化されたようで、しばし興奮気味になるシャル。さらに。
「すごくモフモフなので!きっとッセバスさんも気にいると思います!」
「そんな!私ごときが『森の王者』ウォルフ様に触るなど勿体無いで御座います。」
こんな台詞を言うのだが、本心では、触りたい欲求で満たされているセバスなのである。
「ウォルフ?!触らせて上げても良いよね?」
「
シャルの質問に対し呼応するかのように一つ吠えて見せたウォルフ
「ウォルフもO.K.と言ってるので!どうぞ!」
この台詞をきっかけに、何かに引き寄せられるかのようにウォルフの黒く立派な身体を触り始めたのである。
「うほっ!これは…なかなか良い毛触りだ!それに!この毛並み!!うむ!シャル様が良き『テイマー』であられる事が伺える程美しいっ!…ここまでの行き届いているとなると、どれだけ手入れする為に時間を消費した事やら…毛一本一本にまで、シャル様の愛情が伝わってきます。」
※この後『テイマー』とは何たるか?を数分ほど熱く語り出したので割愛します。※
ふと我に返えり、当初の目的を思い出したのか、一瞬焦りをみせるも、すぐさま冷静になり、立ち上がるセバス
「申し上げございません。少し熱く語り過ぎていました。」
「本当に動物が大好きなんですね!」
「はい、見ているだけでも癒やされます。」
「
「コホン。それでは、シャル様。屋敷までご案内致します。」
こうしてセバスの案内の下、庭師の職人達の腕が伺える程に
側から見れば、公園でおじいちゃんと孫が、犬を連れて散歩しているかのように見える程に、ぴったりとついて行くシャルとウォルフの姿があり。それに。
時折、もう一度触りたいたそうに、ウォルフの方をちらちらと見ていていた事は、彼の名誉の為言わないでおこう。
やがて並木道を抜け、色鮮やかに空の模様を
呼吸の為か錦鯉にも似た生物が、水面近くまで顔出した姿を微笑ましく眺めつつ渡り終えた。
石膏で造られた女神像を見下ろすように、大きな建築物が見え始め。女神の顔は、何処と無くこの家の持ち主に 似せて造られていた事は言うまでも無いだろう。
「只今戻りました。ハーティア様。シャル様がお見えになりました。」
門から屋敷まで歩く事数十分 無事に到着したシャル御一行は、セバスを先頭に玄関扉の指紋認証を解除し、開け放たれたドアの前に立ち到着した事を、この家の主人に報告を済ませ。
「いらっしゃい!シャルちゃん」
この家の主人であるハーティアが出迎えの挨拶をし「ハーティア様。到着が遅れて、申し上げございません」とセバスはシャルとの会話に花を咲かせ過ぎて遅れた事を報告したのだった。
「そう、ならいいわ。」
あまり深く追求しなかったのも、彼が、同じ誤ちはしないとハーティアは分かっていたからだ。
「セバス!お風呂の支度をしてちょうだいな?その子、お風呂に入れたいから」
シャルが連れてきたウォルフの足下を見ると、屋敷まで来る道中で付いてしまったであろう泥を指差すハーティア。
「かしこまりました。」
一礼した彼の姿は、一流階級の執事を感じさせる程で、風呂の準備をする為に去ろうとした、その時。
「わーい良かったね!セバスさんにお風呂入れてもらえるよウォルフ!」
「
「おわっ!?」
ハーティアとのやり取りを良い感じにシャルに誤解され、思いも寄らない事を言われ動揺してしまったセバスである。
「あら良いじゃない、入れて上げたら?」
「でも、私は他の仕事がありますので..」
「
このやり取りを側で観察していたウォルフがセバスの顔を見上げ、見つめ合う事数秒。
「かしこまりました」
一段と真面目な表情となった彼が、ウォルフと一瞬に風呂へ向かおうとした、その時。
「はわわ、そ、そうですよね。セバスさんいろいろお忙しいのに。ワガママ言っては、ダメでしょウォルフ!」
「
彼が見せた表情を、悪い方に誤解したシャルは動揺し、ウォルフは怒られたと思いその場で伏せをしたのだが。
「シャル様。大丈夫でございます。」
「で、でも..」
「私は、シャル様をこちらへとご案内さて頂いた後、時間に空きがありますので。」
「シャルちゃん。セバスもこう言ってる事だし、お願いしたら?」
「ハーティアさん、良いんでしょうか?」
「ええ、良いわよ、あんなセバスを見たの初めてですし。」
•・あんな表情をされたら、やっぱりダメなんて言えませんわね•・
ウォルフを見ている彼の姿が、まるで、何かを期待しているかのように映っていたのだろう。こんな事を口にしたハーティア。
「そうですね、お願いします。セバスさん。」
ハーティアは、困りはてていたシャルに助け船を出し、しばし考えた後、何かを感じて了承したのである。
「主人である、シャル様の了解を得ましたのでウォルフ様。浴室はこちらでございます。」
「
こうして、風呂へと向かう『老紳士』とウォルフなのである。そして。
「ごめんなさいハーティアさん。ウォルフが迷惑かけちゃったみたいで…」
「良いのよシャルちゃん。私は、楽しそうな彼を久しぶりに見れて嬉しいですし。」
シャルは深々とお辞儀をし、ハーティアは、ハーティアで気にしてない
浴室へと向かうウォルフのしっぽ同様『老紳士』の心は無邪気にはしゃいでいたことは察して欲しい。
「ここで話すのも何ですし。リビングへは私が案内して差し上げますから、そろそろ上がってちょうだい」
「はい…およ?」
今だ玄関で立ち話をしていた事を思い出したのか室内へと向かおうと、シャルが顔上げた、その時。
ハーティアの顔が視界に入るとある疑問が浮かぶ。それは。
「あの、ハーティアさん?普段眼鏡かけられていたのですね?」
「ええ、似合わなかしら?」
「いえ、すごく!素敵です!!」
ボストン型下段フレーム(赤)と言う眼鏡をかけており、インテリ美人を彷彿とさせ、誰もがお姉さんと言いたくなる程に、鮮麗されたデザインが施されていた。さらに。
「うふ、ありがとう。」
「シンプルな
「あんなの、毎日に着てたら肩凝りますわよ。」
普段清楚系が多いハーティアの私服姿を見たシャルはこんな事を口にした。
「シンプルな
「あんなの、毎日に着てたら肩凝りますわよ。」
ちょっとだげ呆れた物言いをしたハーティア。
「あの、私の服変ですか?」
「自分の似合う服着れてると思うわよ。」
「はうぅ、ありがとうございます。」
可愛いすぎて似合わないと思っていた服を褒められ思いのほか恥ずかしくなってしまったシャルなのである。
「うふふ、小動物みたいで可愛い♡」
「はうぅ///」
さらに、不意打ち気味に容姿を褒められ、恥ずかしさが増したシャルは、その場で縮こまってしまったのだった。そして。
「改めて、ようこそ我が屋敷へ。シャルちゃん、これからも私と仲良くしてね?」
「はい!こちらこそよろしくお願い致します。」
こうして、無事に公爵家へ迎え入れられたシャルなのである。
____________________
ここは、ハーティアの屋敷 浴室内。
「何とっ!ウォルフ様は、レディーでしたか。」
「
「それでしたら、美しく仕上げねばなりませんね。」
「
「このセバス!全身全霊を掛け、ウォルフ様を麗しのレディーに仕上げて見せましょう‼︎」
「
ある意味裸の付き合い真っ最中でした。
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