第10話 これからの事。
ここは、私立オズウェル魔法学園 理事長室
先の慰労会は、滞りなく終わり、食後の余韻に浸りながらも、会話は進み、これからの事を話しをしていたのである。
「シャルさんでしたか?」
と質問するハーティア。
「皇女殿下。私の事は、シャルとお呼び下さい。ただでさえ同じ空間にいる、というだけでも恐れ多いです。」
おそらくは、先に自身の軽い情報交換でもハーティアとおこなっていたのか、今も、緊張を隠しきれずにいる。シャル ロア テディベアラ
「私も、ここではあなたと同じ一生徒です。それに、公務の方は兄がいますから、プライベートでも、普通の女の子と一緒です。なので、皇女殿下などではなく、名前で呼んでくださいまし。」
と柔かに微笑み話すハーティア。
「殿下を名前でお呼びするなんて、私には、無理です。」
それでもまだ、シャルは否定的なのだが、
「そうですわね。皇女殿下などではなく。ハーティアと呼んでくださいまし。シャルちゃん。」
こう呼ばれたのが決めてになったのか、あるいは、もうすでに、にこやかな笑みが彼女の心を動かしたのか、少し、沈黙するも、意を決し。
「では。ハーティアさん・・で」
と答え、彼女の表情は、少しだけ困惑するも、そこには、天使のような笑顔があり。
「あ、お姉ちゃんでもいいですわよ?」
少しだけ、本音が見え隠れするハーティアの姿までもあったのである。
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「シャルちゃん。」
とハーティアに呼ばれてもまだ、緊張は隠しきれずにいる彼女 少しばかり声にならない声を上げてしまうのだった。
しかし、無理もない話で、例え本人が一般人を
「ひゃい!」
「うふふ、そんな、気を張らなくても」
緊張するなっと言うのが、おかしな話しであ
る。
「今、お住まいどちらですの?」
と質問。
「え、えっと。」
彼女が、答えようとしたとき
「あーその事なんだが 、まだ、学生寮の空きがなくてだな。しばらくは、ホテル住まいになるそうだ。」
2人の会話を聞いていたのだろうハヤテ学園長が割って入っるのだが、
「ハヤテくん。使えねー」
側にいたのかマリアンヌの余計な一言で、一瞬だけ殺伐とした空気になるのである
「なら、私の家に来なさいな。」
ハーティアがこんな事を提案してみると、少し戸惑いが感じれるくらいの表情となりながらも
「いいえ、ハーティアさん大丈夫です。」
提案を断わるシャル。
「シャルちゃん。ホテルだと、お金がかかりますし。尚且つ、学費も払うとなると親御さんも大変でしょう。」
とハーティアは語り。
「バ、バイトしようかと」
当たり障りのない範囲で断るのだが、この台詞が、どおやら裏目に出たようで。
「なら、丁度良いではありませんか。私がメイドとして雇って差し上げますわよ?」
「え!?」
この提案が出され、キョトンとするも、驚きの声が出てしまい、今更アルバイトする事を嘘でしたなんて言える心境ではなくなったシャル
「もちろん住み込みで。」
彼女が、こんな心境なのをしってか知らずかは、わからないが、たたみかけるハーティア。
「おこずかい程度ですが。給料も支給いたしますし、部屋も用意して待ってますから。それに、ペットを飼ってらっしゃるようなら、防犯にもなりますから。どうです?…シャルちゃん。」
こうしてシャルが、公爵家で給仕する事が決定していた。その時。
「はーちゃん?ちょっと待って」
このやり取りを側でみていたであろうドロシィが、「パパの学園 バイトNGじゃなかっけ?」とハーティアに忠告し、
このやり取りは、公爵家で働くのは、精神衛生上良くないと思っていた彼女には
「パパ・・学生寮の件なんとかならない?」
父にすり寄り、右腕にしがみつくドロシィ。
「だねー・・パパは、私達に困った人がいれば助けてあげなさいっと言ってたよね?…パパ?」
このやり取りを側で聞いていたであろうアリスが、父にすり寄り、左腕にしがみつき
•・この妹系美少女は、誰にも渡さない!
「「パパ!お願い♡」」
もうすでに、シャルの笑顔にやられていたのだろう、こんな、2人の思いも
この結果は、ハーティアに良い感じの誤解を生むこととなり、結局、公爵家で働く事となってしまったのである。
後の世に、公爵家、最強メイド部隊。『スレイプニル』リーダーの誕生した瞬間でもあったのだ!これは、また別の話し。
「ハヤテくん...マジキモい・ ・」
また、マリアンヌの余計な一言で、一触触発の事態になりかけたことを追記しておこう。
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場所同じくして、数分が経ち、
「さて、そのままで結構だが、私の話しを聞いてくれ。」
ハヤテ学園長が、ハーティア、織姫、白雪
花蓮、アリス、ドロシィ、シャル その同行者であろうマリアンヌ。ここに居る全員に報告したい事があるようだ。
「先の襲撃事件を見て、これより、ここにいる者。全員のデバイス常時解放権限を与える事とする。」
と言い、コンソールパネルを呼びだし『アクセス権限事項』を操作し、常時携帯を可能とし、それは、今後の戦闘が困難になることを意味していたのだ。
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『アクセス権限が最終段階まで上げられました。これより、常時携帯を許可します。』と生徒手帳デバイスにナビ音声が流れ、彼女達
に与えられる
Arms《アームズ》
【武器】
Duel《デュエル》
【1対】
Multi《マルチ》
【複合】
Shooting《シューティング》
【射撃】
略称【A.D.M.S《アダムズ》】これが、ドラグノフのもう一つの名。近接戦闘をメインとしている。『じゃじゃ馬』の異名を持ち、黒く輝くNi-408を彷彿とさせた。そして。
対をなすように名付けられた【EVE《イブ》】サポートを主とし『白銀の魔女』の異名を持つそれは、月夜の光にも似た銀の輝きを放ち【A.D.M.S《アダムズ》】と同型機
こうして、二丁一対の姿を見せたドラグノフの真の力が今復活す。
「なるほど、ドラグノフが本気で戦えるのですわね。」
この指令を受け、どこか納得した様子を見せたハーティア。
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アリス、織姫、白雪、花蓮、に与えられた権限は必殺技に相当するものの、これまでは発動するまでに時間がかかりまた、威力が強く反動が大きいので使用を控えざるおえない状態であった『
最後に、ドロシィに与えられた権限は『学園が保有している禁書庫(
シャル、に与えられた権限は『学園が保有している禁書(一般指定に限る)閲覧権限』通称ノーマレポートというもの。
これについては、一瞬シャルは戸惑いつつも、事態の深刻さを知り、皆深妙な表情となるのである。
これまでのやり取りを、一部始終ハヤテの側で見ていたであろうマリアンヌが、口を開いた。
「ここから、私の話しを聞いて頂戴?」
この一言をきっかけに語り出した。
「私はこう見えて、ロイヤルナイツの一人よ…あ、今は防衛省として管理されてるから、簡単に言えば国家公務員ね、」
時代が変われば、名称も役職も変わるということだ。こうして、自身の身分を明かし、シャル以外は驚愕するも、これまでの、ハヤテとのやり取りを見て薄々感じていたのだろう。何処か納得した様子を見せた。そして。
彼女は語り出す、これから出会うであろう『闇』について。
彼女は、投影機を使い、
「今回の黒幕であろう人物よ。名前は、エンリケ・シュタイナー博士。
こうして、写し出された人物。全体的な印象としては、インテリ系の男性をも彷彿とさせる表情をしていた、彼の過去を少しだけ話そう。
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B.C1990年頃の事、彼には、最愛の娘がいた。名を、ロゼッタ・シュタイナー。当時8歳
研究室にこもりがちになりながらも娘と共に、幸せに暮らしていた。
だが、そんな幸せも長くは続かなかった。
【
なんらかの原因により、保有魔力が過敏に反応し、行使するだけでも暴走状態へと陥る。
使わずとも、徐々に保有魔力が抜けていき、やがて死に至らしめる病。
娘 ロゼッタが、100億分の1の割合で発症する奇病にかかり、やがで、幼くとも肉付きが良い身体は徐々に痩せ細り、歩く事とすらままならずに、死に向かって行く娘の姿を見届けながら、彼は見つけ出したのだ。
とある文献に【賢者の魔核】と記載されていた。それは、数千人規模の
やがて禁術として封印され、人々の噂となり、幾度の時代は過ぎ都市伝説となっていた。それを。
来る日も来る日、何かに取り憑かれたように研究を続けていった。
それは、決して人が手に入れてはならい『闇』であろうとも、今の彼にはそんなことは関係なくて、ただひたすらに娘の元気な姿を取り戻したい父の顔があり、
そして、彼が研究を重ねる日々とほぼ同時期に起きた事件。
『失踪』
まだ、
呼応するかのように、突如として現れた『魔獣』の群れ。
何も知らずに平穏に暮らす村や街などを襲いかかり、人々の生活を脅かす存在として現れ、数万人規模の大きな被害を生み出したのだ。
やがて、人々は『天災』とし、一部の地域に住む村とも呼べぬ先住部族たちは『神』の怒りとし
その最中、とある研究者が学会で発表した。
【愚者の種】
それは、【賢者の魔核】とも呼べぬ粗悪品。
だが、問題はそこではなく製造方法にあったのだ。そして。
この報告を受け、当時の来賓達は頭がおかしいいと彼を罵り、一方で王族達はその者を『魔獣』襲来の首謀者とし、連れて来るよう官僚達に伝令を出したのである。やがて。
兵士達により拘束された彼は、監獄に幽閉される。
そして、研究資料は全て没取され、最愛の娘の最後を見届ける事すら出来ずに獄中で自殺したのだ。やがて。
容疑者死亡のまま月日は流れ、いつしか製造方法等が混合され【賢者の魔核】と言える代物となり、皮肉にも『デバイス』の基礎概念になっていったのだ。
だが、彼は生きていた。最愛の娘を救えなかった後悔の念を主とし『悪意の波動』にも似た負の感情が彼の遺体を包み込む。やがて。
時が逆再生するかのように損傷すらなく、生前と同じ体になり、埋葬されていたであろ囚人墓地から這い出るように、娘の遺体と共に消え去ったのだ。
そして彼は、場所とも呼べぬ、地図にすら載らない街で、娘の遺体と共に、再生を心待ちにしながら今も尚『闇』に囚われるも、それすら気付く事も出来ずに、研究し続けているのである。
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「残念だけど、今も行方を暗ましているのよね...」
と言い、暗い表情を浮かべるである。
「なんで私達に..?」
ドロシィのもっともな意見が出るのも当然の事だ。何せ、国家機密に準ずる事を話しているのだから。
「ハヤテくんが昔馴染みだから…かな?」
そう言ってマリアンヌは、騒動の発端である
人物の居場所がつかめてない事。彼に仲間がいて、その者に襲撃された事 それはまるで、彼女なりの優しさの証しなのだろうか、次々に語られていく。しかし。
「これは、注告ね、もし仮に..『大きな闇』に出会ってしまっても、自分達でなんとかしようとせず、周りにいる大人達を頼る事…良い?」
そこには、知人では無く身内を心配するように感じさせてくれる表情をする彼女の姿があるのであった。
「さて、しんみりムードはここでおしまい!明日からは、楽しい学生生活を送る事。」
この後仕事なのか、こんな台詞を残し彼女は理事長室から出て行くのである。
それを見送った『少女』達は、真剣な表情となり、
「拙者は、難しい話しはわからんでござるが...今よりずっと強くなれば良いだけでござるよ。」
こんな織姫の台詞を呼応するかのように賛同するのである。
「縁はたけなわと申しますし、そろそろ宴の席はお仕舞いにして、皆明日からは、気を引き締めて、勉学等に励むようにお願いします」
と学園長の〆の言葉で、慰安会にも似た祝勝会は御開きとなり、再び彼女達は日常へと向かうのである。
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