第15話ホテル•リッシェンブルグ①

【リッシェンブルグ砦】


かつてここは、魔獣大戦時代に最終防衛ラインとしてリッシェンブルグ王国 エレストレア王国との国境付近に設立された。やがて。


幾年もの月日が流れ、砦の防衛機能だけを残し、さまざまなレジャー施設を導入 その後、ホテルへと改修され、海や国境が近い事からさまざまな調度品が売られるようになり、道の駅として利用されるようにもなった


※リッシェンブルグ王国 観光協会より。


____________________




場所同じくして夕暮れ時 遺跡ホテルへと変貌を遂げた砦の前に、一台のバスらしき魔導四輪が止まる。


「さあ、シャル。ウォルフ着いたよ。」

「はぅわ、す、すみません!兵藤さん。少し寝ちゃいました。」

「シャル?いろいろと疲れていると思うのでホテルに着いたら、向かえが来るまでゆっくりと休んでおく事。」

「はい。ウォルフ着いたよ!降りよう?」

クァ〜ンおりるの?」


ここまでのやり取りを、側からみれば仲の良い姉妹だろう、シャルの右隣りを陣取る花蓮の寝姿が、書き表し難い幸せな表情を除いては…


「犬神さん?起きてください!おりますよ!」

「ふみにゃ、ぐへへ、なにもせえへんよ、ぐへへ、むにゃ、」

「兵藤さん、どうしましょう?」

「こうするのよ!」


粒氷造形アイシングビルド


シャルが起こしても、なかなか反応を見せない花蓮に対し、魔法で生み出した1cm四方の立方体の氷の粒を容赦なく服へ投げ入れた白雪


『ひっ!』と反応し『ヒョエーーー!』と叫び起きた花蓮を冷やかな目で『起きないと、本気で置いて行くわよ』と言ったのである。


そして、この後運転手に何故か花蓮だけが怒られていたのである。


「なんやてウチだけがっ!ウチが悪いんとちゃうのに!」

「花蓮?…貴女ね!言い掛かりはよして!いままでの行いを呪いなさい!」

「クスス、お二人共、本当に仲良しさんですぅ」

「あら?それは、心外ねシャル!ただの腐れ縁なだけよ?!」


シャルの投げかけに、好意と取れるような否定を見せた白雪に対し


「せやで!ウチと雪やんは幼馴染みだから!とっても、ラブラブやで!」


と言って抱きつくも『違うわ!ボケっ!』と拒絶する白雪なのだが、その頬は少しだけ赤くなっていたのである。


「あ、私、おばさまに連絡して来ますので、先にフロントでチェックイン済ませに行ってます。」

「ほな、ウチ等は、ロビーで待っとるよ!」

「ええ」


2人に気を使ってのことだろうウォルフを連れて先にホテルへと行ってしまうシャルなのである。

____________________


「ようこそ、おいでくださいました。当ホテルのご利用ありがとうございます。」


ホテルのフロントで、ウォルフのブリーダー登録を済まチェックインしたシャルは、備え付け通信デバイスを借りマリアンヌへ連絡を取るのである。


「あ、おばさま。」


•・シャルちゃん•・今何処?


「リッシェンブルグと言うホテルにいます」


•・あら?そんな所にいるのね!買い物に出掛けて、帰えったらいないんだもの•・心配したわよ


「迷惑かけてすみません!マリアンヌおばさま」


•・いいのよシャルちゃん!•・元気な姿を見れて良かったわよ•・で、何があったの?


「実は、森で悪い人達に襲われてるところを助けていただいた方とこっちに来ました。」


•・そう•・•わかったわ!事件の方は、私に任せてシャルちゃんは、そこでゆっくりして来なさいね?•・


「あ、はい、ありがとうございます。マリアンヌおばさま。」


•・明日の昼過ぎには向かえに行くわ


「はい、分かりました。でも、お金が…」


•・あ、お金の事は心配しなくて平気よ?そこの、支配人さんには言っておくからね?!


「あ、はい、すみません。ご迷惑をお掛けして…」


•・いいのよ、シャルちゃんは、私の娘みたいなものだから何か困った事があるなら、なんでも言って!それじゃあね。


「あ、はい、また明日です。」


•・バイバーイ


一通りの事情を説明したシャルなのである。

____________________



そして、通信を聞いたマリアンヌはと言うと自身のデバイスである【深海の妖槍デュランダル】のコンソールパネルを設置して誰かに連絡しているようだ。


「サジーくん…お久しぶりね、」


•・おやおや、これはお久しぶりですね、マリアンヌ様•・


マリアンヌがサジーと呼ぶ人物は好青年と言う感じの男性だ。


「ホテル経営は順調?」


•・ええ、お陰様で…で、今日はどう言った御用件で?


「そうね、私の姪が貴方のホテルに来てるみたいだから、よろしく頼むわね?」


•・姪と言うと…あーシャル=ロア様ですね?


「そうよ、代金は私が明日支払いに伺うからよろしくお願い」


•・分かりました。では、後程


「ええ、また明日」


一通り支配人と約束を取り終えると、次なる人物に通信するのである。


「サラちゃん元気?」


•・相変わらずねマリア!•・で、今日貴女非番じゃなかったかしら?…


マリアンヌの連絡を受け『サラ』と呼ぶ人物は真面目なOLと言う感じの女性だ


「そうね、そのつもりだけど、仕事頼めないかしら?」


•・はあ、また厄介事ですか?そうですか!貴女はいつもいつも私…


「まあまあ、サラちゃん落ち着いて?」


•・はあ、で、なんです?私に頼みたい事とは?…


「うーん、実は、私の姪が森で襲われたらしくて、その犯人の背後関係を全部あらって欲しいのよ?」


•・あーその事件ですか!私の所にも報告が上がって来てるので、それはいいのですが…


「うん?何?」


•・あまり、派手に暴れたりしないで下さいね?…


「それは、相手の出方次第ですね!」


•・はあ、あまり気が進みませんが、分かりました2日下さい…必ず報告しますので…


「さすがね、サラちゃん。楽しみに待ってるわ!」


•・ええ、ではまた…はあ、



一通り同僚らしい女性と約束を取り付けたマリアンヌは射殺さんばかりの鋭い眼孔がんこうとなり『潰す』と独りちするのである。


____________________


そして、話しはロビーへと戻る。


「兵藤さん、犬神さん、お待たせしました。」

「シャルやん。ウチ等の事は下の名前で呼んでええよ。」

「そうね、シャル。花蓮はともかく私の事は好きに呼んでもらって構いませんよ?」

「ともかくとは何や!そんなやから、男にモテヘんで、女子ばかりにモテるんやっ!ええいっ!羨ま…」


花蓮は何かいけない地雷を踏んだようで


「ねぇ?花蓮…貴女は、私に喧嘩を売ってるんですか?売ってますよね?そうですよね?そうなんですよね!?」

「アカンッ!し、死ぬ…」


胸倉を掴んだ白雪は徐々に締め上げる。だがしかし、花蓮にはご褒美に過ぎないのである。


「でも…嫌いじゃない!!ウチにとっては雪やんに殺されるなら本望…!さぁ、好きにせい!!」


この台詞を聞いた白雪はドン引きし、締め上げるのを止め。


「はぁ、はぁ、ホンマに逝ってまう所やった!」

「コホン!シャル?こんな変態になってはダメよ?」

「えっ!私には、仲良しさんにしか見えませでしたけど?」

「あら?シャル…貴女は何か誤解してない?こんなのと一緒にされては心外ね?!」

「は、はぃ」


ちょっと腑に落ちないシャルなのだが、異様な冷気に当てられたのか、それ以上は何も言葉が出なかったのである。そして。


「良いんですよ!良いですね?貴女は良いですよねー?男にモテモテで!なんで、私には、言いよる素敵な筋n…殿方がいないでしょうか?」


不貞腐ふてくされ気味な白雪は、ウォルフを撫で回して愚痴をこぼすのである。


「げほ、げほ、ちょっとまてやっ!あんなのモテるとは言わへん!!何がアネゴじゃボケっ!何にが悲しくて、あんなむっさい男共に言われなあかんねんっ!ウチかて、可愛い女の子にお姉様とか呼ばれた言いんじゃあ!」


ついつい本音が前に出しまう花蓮なのである。そして。


「えーと、お二人共事情は分かりませんがきっと素敵な方が現れますよ!」


また不毛な言い争いをすると勘違いしたのだろう、こんなアドバイスをするのである。


「天使や!」


そして、何を勘違いしたのだろう花蓮はシャルに抱きついた。その時。


「はぅわ!」


驚くシャルに


「離れなさい!」


注告まじりに、花蓮の体を引き離そうと努力する白雪


「嫌やっ!」


駄々をこねる花蓮に


「く、苦しいですぅ…」


いい加減に放して欲しいシャルを尻目に



「YOU達楽しそうデスネ!」


3人と1匹の後方から呼び声が聞こえ


「ウチの心の天使セシリやん!」


花蓮が声に反応すると、そこには


「それだと何だかalienエイリアンみたいでイヤです!」


金髪縦巻き、フリル付きの改造制服を身にまとう『少女』が1人居たのである。


「セシリア?何時いつも思うのだけれど!貴女の制服は校則違反じゃない?」


軽く説教をする白雪なのだが『個性デス!』

と簡単にあしらわれてしまうのである。


「どうやら初めましての方がいるようデス!私はセシリア・ダ・ヴィンチ!よろしくデス!!」


握手を求めるセシリア


「私はシャル=ロア・テディベアラ。シャルと呼んで下さい。」

「mis.シャルよろしくデス!」


そして、握手を交わし


「あと、この子が友達のウォルフです。ウォルフ?ご挨拶」

ウォンこんにちは〜」

「とても、カッコイイデス!!」


優しいく撫で回すとウォルフがとても気持ち良さそうだ。


「mis.シャルはとてもcute《キュート》デス!」

「はぅわ!」


突然ハグした2人の事を羨ましく見ていた花蓮の事はそっとして置こうと決めた白雪なのである。そして。


「せや、セシリやん?」

「何ですカ?」


花蓮は、何かを思い出したかのようにセシリアに、ある物を渡すと


「この魔道書解析しといてくれへんかな?」

「?…!…!!こ、これは、ソチア魔典!どどどどどどどどどど…」


目を輝かせ慌てるセシリア


「ちょっとは落ち着き!はーい深呼吸」

「ひ、ひ、フー」

「落ち着いた?」

「はいデス!」


なだめる花蓮は追い討ちをかけるかのように、次を渡す


「ほな、次はこのレリックや!」


シャルが持っていたであろう代物を見せ


「これは?…!…!?」


舐め回すように観察するセシリアはある事に気付いた


「これは不可能で出来てます!これらは何処で手に入れましたか?事と次第によっては警ら隊を呼びますよ?」

「後で事情は話すさかい、それも調べといてくれへんかな?」

「良いのですか?私で?」

「お願いや!信頼して頼めるのセシリやんしかおらへんねん!!」


駄目元で頼む花蓮に


「分かりマシた!ありがとうデス!!!」


流暢な言葉から一変片言かたこととなり花蓮の頬にキスをし、セシリアの心境が見える程にスキップしながら去っていくのである


「良かったじゃない?女の子にモテて?!」

「はぅ」


側から見ていたシャルは顔を上気させ、冷やかす白雪なのである。そして。


当の本人というと


「ウチ、ここでタヒレても良い…」


顔を上気させ、頭から湯気が立ち、その場で倒れるてしまうのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Re : Alice 猫田ヒラ社員。 @9733

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ