第14話 森の思い出②
「おい、おい、お兄さん方?寄ってたかって、おチビちゃんイジメて楽しか?」
学生服姿のまま、オッドアイを鋭く輝かせる何者かが、彼等の前に立ちはたがる。
「なんだ、貴様!これは我々教団が悪魔憑きの少女を断罪する為の行為だ!邪魔するなら…!がはっ!」
刹那の殺気すら見逃す事とすら無く相手の懐へ飛び込み肘打ちで沈める。
「悪魔ねー、どう見てもあんたらが、悪人にしか見えへんで?」
「なっ!貴様も悪魔とみなして断罪してくれる!これて…!ぐはっ」
魔方陣から展開されている術式を理解し、相手の魔法をキャンセルし反撃する
「中級魔導士が得意とする。事象干渉型術式、ダウンスレイブ…ネタさえ分かってしまえば、避けて反撃するのは簡単やな」
後は、なんて事無かった…圧倒的な実力差による
「ひっ、ば、化け物ぉーー!」
「超絶美少女花蓮ちゃんに向かってそれは無いやろ!」
「だぁーっ!」
負けじと相手もバインドで拘束するも、圧倒的な実力差の前では、悪手となる。
「アハハ、馬鹿めっ!これでもう動けまい…!…はっ?」
「ふんっ!」
相手を拘束具ごと引き寄せ、骨を砕き、拳闘士さながらの戦いを繰り広げていた
「そこの魔眼の娘、動くなっ!」
聖職者と思われる男性が唐突に現れ、シャルの背後をとり、首元に魔力を帯びた手。聖書らしき物は怪しく光る。
「チッ、分子超振動術式フォトンレイザー!人質とか汚いで…自分?」
「あまり手荒な真似をしたくはありません。ですので、シャル様。自分の手に持つレリックをお渡し頂きいたい。」
けれども、彼がそれを受け取ることは永遠にこない。
「えっ?きゃっ!」
「なっ!液化窒素ガスを発生させる程の冷気を生む、空間凍結術式ニブルヘイム!!」
「げっ、この術式…ウチ、見覚えあるんやけど…」
又の名を『アブソリュート•ゼロ』生物さえ生きる屍と化す『絶対零度』と名付けられたこの魔法を、欠伸ひとつしながら放つ少女が聖職者らしき男性を、氷の世界へと誘うのである。
「ふぁ〜、ねぇ花蓮?」
「げ、雪やん!」
「こんなモブに、何、いいようにやられそうになってんのよ?」
「しゃあないやん?この子等を巻き込まんようにせな、あかんかったからな」
と言ってへたり込むシャルを指差す。
「あら、可愛い♡」
「せやろー」
ドヤ顔する花蓮
「なに、勘違いしてんのよ!貴女の事なんて、1度も可愛いいだなんて思って無いからね?」
「ひどい…ウチの事心配して来たと違うんか…?」
「別に貴女の事なんてこれっぽっちも、心配なんてしてないですが」
魔法も発動しても無いのに冷気が生まれ、落ち込む花蓮を見て外方を向き
「…まあ、1μ《ミクロン》程度には、心配してあげなくもないですけど」
と言い出したのを
「ツ、ン、デ、レ・•だ•・と…!」
何を勘違いしたのか、こんな事を言い出した花蓮に対し、
「違うわっ!ボケっ!」
とボディブローを入れ
「ぶっほ!」
膝から崩れ落ちていく花蓮を見た
「ごめなさい、変な所を見せましたね。私は、兵藤 白雪よろしくね。」
「あ、はい、私は、シャル。シャル=ロア•テディベアラです。」
白雪は、冷静さを取り戻し、自己紹介を進め
呼応するかのように、シャルも挨拶を済ませると『その子見てあげようか?』怪我を負っているウォルフを指し示すのである。
「はわわ、そうでした!」
「飼い主がそれでは駄目よ…」
「はぅ」
「なんやて!美少女が怪我したてっ!?」
何を思ったか先程まで、地面に疼くまっていた花蓮が飛び起き、目を輝かせている。
「よく分かりましたね!ウォルフが女の子だって!」
「へっ?!」
「花蓮…貴女…動物のメスにまで興味があったの?」
「ないわっ!」
「なんだ!我に、欲情したのか!?」
白雪が放つ、治療術式の魔力にでも反応したのか、先程まで眠っていたゼフィロスが目を覚まし
「するわけないや…犬ころが喋ったっ!?」
謎の声を発する方を向く花蓮に、呼応するかのように
「ウォルフが喋った!?」
とシャルが反応する。
「花蓮…貴女は、頭までおかしくなったの?…犬が喋るわけないでしょう?」
「喋るぞ我!」
何故かノリノリで話すゼフィロス。
「えっ、野太い声…素敵」
気のせいである。そんな声はしない、きっと聞き間違いなのである。そうゼフィロスもまたウォルフと同じ女性体なのだから。
「なんと!白雪殿は、こいう声がお好みか!」
ゼフィロスが空気を読んでか自在に声をコントロールする。
「はぅ、はっ!そいえば、治療中でした。」
心の揺らぎは、魔法の効果を著しく減少するのか、冷静さを取り戻し再開する。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「さて、こんなもんでええやろう。」
おとなしいと思ったら、倒した聖職者らしき人物とその取り巻きを拘束具で固定していた花蓮
「さて、警ら
「「……」」…
「はぁ、まぁ、ええやろう。あんたら、元軍人やろ?」
「うっ、……。」
聖職者らしき人物が応えようとするも、押し黙る。
「沈黙は、是、やであんたら」
けれども、花蓮質問は始まったばかりだ。
「なんで、我々が軍人だと思ったのだ?」
あくまで、白を切り通す聖職者らしき人物。
「うーん、戦闘での身のこなし、あれは、訓練されてるそれやった。それだけではあらへん、あの子が、張った罠の術式解体の手際の良さや。」
まるで、手品のタネ明かしのような、尋問は続き
「ウチに、
「なっ!では、いつから…」
自分等に、落ち度があった事に驚愕するも
「あんたらが、古びた教会へ入って行くとこるからやな、それに、殺気消すの下手すぎやん?あないに、殺気びんびんに放っとったら、何かあると思うやろう?」
・•・気付いたのがウチやなくて、雪やんやったら、えらい事になってたで•・
尋問の中花蓮がこいう事を思うの無理もない、悪意に対して敏感な兵藤 白雪にとって彼等は、排除すべきものなのだから。
「…なるほど、我々が敵わないわけだ」
『落胆』
彼等の心の中を支配したそれは、諦めにも似た真実を伝える。
「君の、察した通り…我々は、隣国に接する元軍人。目的は、あるレッリクの取集。我々の国では、それを、用いて軍事力を高めようとしていたのだ」
「あんたら、戦争でも引き起こす気やったんかっ?!」
「逆だ…戦争を引き起こしてなんになるというのだね?苦しむのは、民の方だというのに…」
何か悲し出来事を思いだしたかのような表情となる彼。
「そんな時だ!我が国では、ある教団が保有していたレリックの回収を我々に命じた。そして、我々は教団に捕まり失敗に終わる!それからは、地獄の様な日々だった!来る日も来る日も、心臓の音すら拷問の道具と化すような真っ白な空間で、仲間が助けに来る事を信じ、待ち続けていた!だが国は、増員するよりも、早々に我々を切り捨てる事を選んだ!」
「なぜ、帰らんかったんや?」
「何故だと?…今更国に帰ったとて死んだ事にされているだろう。けれどだ、我々はこうして生きながらえている!だからこそだ!我々を見捨てた世界を変える為に、教団の力が必要だったのだ…だが…それも、失敗に終わった…もう時期教団側から、粛清が入るだろう…だから…「なんやっ!」…!」
彼の口から出る言い訳にも似た悲劇。
彼等は、これまでの『理想』を捨て、悪意に染まる『理念』に救いを求めた結果なのだ、
「あんたらがやってる事は、ただ八つ当たりやっ!もしもや!それで、戦争にでもなってしもうたら、それこそ、本末転倒違うか?」
「…かもしれんな、だが…君もいずれ、国に仕官する時が来るはずだ…我々のようになったとて、もう遅いのだっ!」
「あんたらと一緒にすなっ!ドアホッ!!ウチの事は、ウチで決める!国に仕える気もさらさらあらへん!ウチのやりたいように生きる、誰にも文句は言わせへん!」
「強いんだな、君は…」
「強くあらへんよ、ウチは…全然、弱いままや…」
何か思うところがあるような表情となる花蓮。
「君のような武人が弱い?ありえないだろ!」
「ウチより、強い奴なんて、ぎょうさんおる!それが、当たり前や!あんたらは、そんな当たり前に、蓋して逃げってただけやろ」
見えない振り、聞かない振り、口にしたら心が揺らいでしまう事が分かってしまった彼等はその場で、泣き崩れてしまったのである。
そして、花蓮の『偽善』とも呼べるこの台詞をが『義善』となり、彼等の胸に響き、やがてそれは『正義』となる事を選んだ彼女の結果なのだから。
「すみませんでした…」」」…
「まあ、ええよ、警ら隊も来たようやし、あんたら少し反省してこい。」
「はい!花蓮の姉御!!」」
「へっ??」
けたたましく鳴り響くサイレンの音と共に、パトカーらしき魔導四輪に乗せられ、刑務所へと護送されて行く彼等の表情は、悪い何かが削げ落ちたかのように、何処か晴れやかな顔付きとなっていたのである。そして。
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「これで傷は完治ね」
ウォルフの治療も終わり
「はい、ありがとうございます。白雪さん」
「我が、眠っていたとは言え、あのような殺気に気付かないとは…すまぬ、シャル殿。それと、白雪殿には
御礼を述べるシャル、ウォルフ?に対し
「お礼なんて良いよ、これは、私がしたかった事だから」
あくまで、真面目な対応をする白雪は
「後は、体力回復する為にも、2、3日安静に…とはいえ、ここでは無理でしょうから、少し移動しますね?」
今後も含めてのアドバイスをするのである。
「左様か、なら、我はしばらくの間眠っておこう。余計な混乱を招きかねぬ故」
「そうして、頂けると有り難いです。」
ウォルフ?からの提案を受け入れた白雪
「じゃあ、移動しようか。私が泊まってる宿ホテル•リッシェンブルグ砦に」
「ほよ?…えっーー!」
•・ゼフィロスさん!逆方行じゃあないですかー!•・
今頃になって別荘地とは、真裏の国境付近まで来ていた事に気付くも、嗚呼無情にも、ゼフィロスは寝息を立て
•・今日は、なんてっ日なんですかー!•・ついてないです…
1人心の中で叫ぶだけであった。そして。
「因みに、ウチも泊まってるでー。なんやったら///今夜、シャルやんになら夜這いかけられてもええよ♡」
何を血迷ったか、警ら隊を見送り終えた花蓮がこんな事を言い出し
「はぅ///」
花蓮が不敬な妄想する姿を見たシャルがつられるように耳まで真っ赤にし恥じらう姿を見た花蓮は、更に調子に乗って
「なんやったら、雪やんに夜這い掛けた後、3Pしようや!」
•・ゾク?!
「さて、この馬花蓮は、ほっといて私達は先を行きましょう」
「あ、はい、行くよ?ウォルフ!」
「
「えーシャルやんまで、無視せんといてやー!」
「い、いえ、ちょっとだけ身の危険を感じましたので…それでは、また後ほどです。」
「だ、そうよ!さぁ、シャルこっちよ、ウォルフも、ちゃんとついて来なさい。」
「あ、はい」
「
「えっ、ちょ、まてや!何もせえへん!何もせえへーんて!置いてけぼりは、かにんしてやー!」
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その日の夜、
「警ら隊の皆さん!こーんばーんわー」
闇夜に紛れ、不釣り合いな程にタキシードを着こなした男性が、先の事件の犯人達を乗せパトカーらしき魔導四輪の前に現れた。
「貴様は、何者だ!」
警ら隊の1人が、運転席から降り拳銃を構え威嚇の体勢へとなった。そして彼は、
「今から、死に行く者達に名乗る名などありません…とは言え、今宵は、満月です。淫欲に充ち満ちた光が、私を美しく照らしだす。今日は気分が良いですから、名乗る事に致しましょう。私はウラド。ウラド•グレテリアと申します。」
異様と思える彼に怯えた警ら隊の1人がウラドに向かい発砲するのだが当たらない。
全てが、見えない障壁に阻まれるからだ。
「それでは、私の糧となる事を貴方達の憂いと致しましょう。」
無慈悲にも魔法が放たれる。
【ブラッド•ブレイク】
次々に、警ら隊を含む全員が爆破四散する筈だった。
「・•おや?1人生き残った方が居ます•・あれは、聖職者でしょうか?…実に面白い!では、こうしましょう!」
【ボーン•デッド•ドラゴン】
「さぁ、鬼ごっこと参りましょうか!」
彼が先程、魔法で殺害した遺体を贄にし、1匹の竜が常闇の森へと放たれる。そして。
「今日は運が良い、彼等の記憶から実に興味深いものを見ました•・そうですね、私は其方へと遊びに行きましょう」
不穏な言葉を残して消え去るのである。
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