幼き日、夢に見た冒険がここにある。

 問題児アニーと幼馴染のフェイは、謎めいた青年ロトに導かれ、遺跡の探検へと赴く――王道の冒険譚を、真っ向勝負で描いたのがこの作品です。
 ジャンルとしては、児童文学とジュヴナイル小説の中間あたり、と個人的には感じています。
 未熟な少年少女が、彼らを護り導く大人とともに経験を積んでいく成長物語――過去に多くの先達が存在する題材だけに、読者のハードルも自然と高くなりますが、ご心配なく。この作品は、多少のハードルなど軽々と飛び越えてしまうことでしょう。
 まず特筆すべきは、少年少女たちの心の動きが、実にいきいきと描かれている点。暴走少女アニーがときに見せる葛藤、そして常に彼女の傍にあり続け、彼女の弱いところを知るフェイ。ふたりの感情の揺らぎは、冒険の中で徐々に浮き彫りになっていきます。魔術師ロトとともに行動することで、彼らの心境がどう変化していくのか。物語の見どころのひとつです。
 ときには魔獣と緊迫のバトル、そしてときには謎解き――読者を飽きさせることなく話が展開していくのは、構成の妙がなせる技でしょう。
 柔らかく、暖かみのある筆致も作品の魅力の一つ。漢字の開き方にもこだわりがあるように感じられます。
 

 上では児童文学とジュヴナイル小説の中間、と書きましたが、もちろん大人が読んでも大いに楽しめることは保証します。ぜひ一読していただき、少年少女の胸躍る冒険を追体験してみてはいかがでしょうか。
 

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