運命に立ち向かおうとする人の姿は、いつだって私たちの胸を打つ。

 長年相争ってきた二国のはざまで翻弄されるのは、奇跡の力を宿す少女エレ。様々な思惑が絡み合う中旅するエレは、自らの持つ力の真実を知る――
 超常の力を持つがゆえに、過酷な運命の流れに巻き込まれることとなったエレが、剣士インシオンと出会うことで、人生の大きな転機を迎えることになります。
 この出会いがエレにもたらす精神的成長、そしてロマンス。この二つが、この作品の大きな見どころといえるでしょう。
 王女として育ちながら、突如として厳しい旅路に投げ出されることになったエレ。苦難の連続の中で、彼女はどう変わっていくのか。
 エレを助け、護るインシオンは、英雄と呼ばれる存在。無敵のヒーローのようにも見える彼にも、人知れぬ葛藤があります。
 そんな二人は、互いに影響し合い、徐々にこころを通わせていくのですが――この過程に、読者はあるいはやきもきし、あるいは胸躍らせることでしょう。
 東洋風とも西洋風とも、はたまた中東風とも違った――あるいはそれらがミックスされたようにも感じられる独特の世界観も魅力の一つ。その土地土地の気候風土、そして食べ物の違いなども、丁寧に描写されています。
 そして、手に汗握るバトル。迫力とスピード感が両立する描写は、見事のひとことです。
 第一部という一つの大きな山を越え、エレは自らの生きる道を選択することになります。これから彼女、そして仲間たちはどのような旅路を歩むのか。続きが待たれます。

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