一気読みしてしまいました……。
全132話・63万字超えというボリュームなので最初は休み休み読むつもりだったんですが、Ⅰ章を読み終えると次Ⅱ章! 次Ⅲ章! と当初の「つもり」はどこへやら。スマホのバッテリーが危なくなって止められず、結局充電しながらずーっと読み耽ってました。それほど面白く、夢中になってしまいました。
で、この休み無く続きを求めてしまう衝動、昔体験した事あるなーと読破後に考えてたんですが、子供の頃、外国の面白い児童文学(それも分厚くて格好良く且つ綺麗なハードカバー)シリーズを一気に数冊借りてひたすら読んでいたものに似てるんですよね。
名のある学術都市の中でも最も権威ある学院。そこで学ぶ11歳の少女・アニーや幼馴染みのフェイ、編入生のエルフリーデ、アニーの悪友クレマン達の学生生活が、便利屋の青年ロトの用事に積極的に関わっていった先で降り立つ隣町や王都の描写が、彼ら彼女らが巻き起こす波瀾万丈な冒険活劇がとにかく楽しい。しっかり練られた世界観と方陣(魔法のようなもの)の描写はとても緻密で、幻想的ながらもどこかリアルで住人達の息遣いが聞こえそうです。
読み進めていく内に自分もヴェローネル学院に、ひいてはグランドル王国に住んでいると思うくらいの没入感は、そんな上述のハードカバーにのめり込む感覚と非常によく似ていて、当時の無邪気な感情とわくわく感が鮮やかに蘇りました。
分厚いシリーズものの本を読むのが好きだった方に、是非オススメしたいです。
問題児アニーと幼馴染のフェイは、謎めいた青年ロトに導かれ、遺跡の探検へと赴く――王道の冒険譚を、真っ向勝負で描いたのがこの作品です。
ジャンルとしては、児童文学とジュヴナイル小説の中間あたり、と個人的には感じています。
未熟な少年少女が、彼らを護り導く大人とともに経験を積んでいく成長物語――過去に多くの先達が存在する題材だけに、読者のハードルも自然と高くなりますが、ご心配なく。この作品は、多少のハードルなど軽々と飛び越えてしまうことでしょう。
まず特筆すべきは、少年少女たちの心の動きが、実にいきいきと描かれている点。暴走少女アニーがときに見せる葛藤、そして常に彼女の傍にあり続け、彼女の弱いところを知るフェイ。ふたりの感情の揺らぎは、冒険の中で徐々に浮き彫りになっていきます。魔術師ロトとともに行動することで、彼らの心境がどう変化していくのか。物語の見どころのひとつです。
ときには魔獣と緊迫のバトル、そしてときには謎解き――読者を飽きさせることなく話が展開していくのは、構成の妙がなせる技でしょう。
柔らかく、暖かみのある筆致も作品の魅力の一つ。漢字の開き方にもこだわりがあるように感じられます。
上では児童文学とジュヴナイル小説の中間、と書きましたが、もちろん大人が読んでも大いに楽しめることは保証します。ぜひ一読していただき、少年少女の胸躍る冒険を追体験してみてはいかがでしょうか。
学院に通う問題児アニーと、その幼馴染みであるフェイは、学院の備品を壊してしまったことからとある課題をこなさなければならなくなるのですが、その過程で出会ったのが、少しだけ言動に偏屈さ、いえ、素直じゃないところがみられる『便利屋』ロト。
彼の助力によって課題を達成するために行動するのですが、ロトは珍しきかな、魔術師だったのです。
彼の魔術による助けを貰いながら、しかし子供たちも助けられるだけではありません。
アニーは十一歳ながら魔物をものともせず切り捨てられる戦士で、フェイも頭の回転の早さや機転で二人をサポートしていきます。
こういう、頑張る子供とそれを文句をいいながらしっかり支えてくれる大人の取り合わせ、私は大好きです。
このトリオもさることながら、やはり特筆すべきは頭までどっぷり浸かれる世界観でしょうか。
ファンタジーチックな『戦士科』の存在する学院と、それをとりまく活気ある中世的な街並み。ふとした描写でその様子がありありと浮かび、気づけばアニーやフェイと共に街を歩いている感覚に見舞われてしまいました。
古きよきハイファンタジーの真髄ともいうべき、空気感が素敵です。
自信をもって、オススメできます!