道なりに進む道筋
昨日の朝から走り、飛び。体力を使っているというより奪われている。
後ろから大勢に追われている状況はもう慣れた。イツキの荷物と自分の荷物を背負いながら逃げるのももう慣れた。
あの後の事だ。
黒の国から出た俺たちは、灰色の町で一泊しそのあと白の国に向かった。
灰色の町にはもう山賊はいなかった。しかし、その代わりなのか、外の山賊達が増えていたような印象を受ける。俺たちを追いかけて、崖から落ちた連中が生き延びて増えたのか、そんなことは分からない。だが、灰色の町から出るまで俺達は苦労をした。
どのような苦労があったか。詳細に説明すると長くなるので具体例を言おう。宿屋、山賊、死体だ。
これは具体的ではないだろうとか、何を言っているか分からないだろうとかいう感想を持っただろうが、キーワードを言うとこんな感じだったのだ。
とても凄かった。これは感想である。
「もう!私無理…」
「あとちょっとです!」
「ミガさん早く走ってください!」
「イツキ…。ハァッ。ちょっと休憩…ッ」
「リン様。大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。でも、お姉ちゃん。足はもういいんですか?」
「大丈夫!心配しなくていいですよ!?」
後ろから追いかけてくる塊は、ざっと500人以上。
朝起きて街を囲んでいたそれに恐怖を覚えながらも。どうにか町を出た俺たちは、こいつらとまた走り込みをすることになった。ここは森の中である。
もちろん。五樹の力とかで吹き飛ばしたりしたんだ。大半はそれで炭や部分的な肉塊になった。しかし、どこかあらか湧き出るのか、どんどん元の数に戻り鼬ごっこのような状態になっていた。
「ストーカーの恐ろしさが疑似的に学べたね!」
「人間でないストカーほど嫌な者はないだろ!」
そろそろ林の感覚が広くなってきた。それとともに、障害物が少なくなり走りやすくなる。
とは言ったものの。走りやすくなるからといって、走る速度が速くなる。もしくは、距離が短くなるのではない。
まあ、体力の消耗は抑えられるというメリットはあるが、それは追いかけているアイツらにも適用出来る事だろう。
「そろそろ白の国に着くんじゃない!?」
「着いたとしてどうすんだ!このロリコンどもを蒔いて入るか!」
「そのまま突入しよう!」
そうこういっているうちに森を出た。
彼方の方に門が見える。予想通りそれは開いていない。
「突入できないだろ!あの門と壁をどうするんだ!?」
「横に小さな出入り口がある!そこから入ろう!!」
近ずいていくと、確かに人ひとり分ぐらいのスぺ―スがある扉が見えた。足が遅いミガさんだけが俺達からどんどん離れていく。
「先行ってて!」
樹はそう言って俺の隣から離れる。そして後ろのミガさんの所まで行くと…
「ミガさん!」
右手をつかみ一気に加速した。
ミガさんの足は限界のようで、転びそうではあったが何とかイツキと走れてはいる。ミーアさんとイツキはだいじょぶそうだ。しかし、リンは疲れているらしい。
どんどん扉に近づいていく。
扉をいち早く到着した俺は、扉を開けようとドアノブに力を入れた。しかし、押しても引っ張ってもびくとも動かない。
どんどんあいつらが迫る。
「あけp!」
「分かってる!」
仕方がないので扉に蹴りを入れた所。簡単に外れた。
そんなにも力を入れていないのにもかかわらず吹き飛んだ扉は、軽くその先の扉に当たり、落ちる。
「あけp壊しちゃ…。もういい!みんな入って!」
そう言いながら、部屋にあった椅子や机。本棚などをどんどん持ってくる。その間。リンを掴もうとした山賊に対し、俺は鉛玉を浴びせつづけた。
「すまん!」
「リン!頑張って!」
よれよれ状態のリンが入ったところで、樹が最後に持ってきた扉をうまくはめる。それの前に本棚。机とどんどんカスタマイズをしていった。
ついでに机をそこらにあったロープで固定した。
外から山賊たちが押し寄せて来たのか本棚たちに衝撃が走る。
ガタンガタンと障害物が揺れるが、俺とイツキ二人がかりの力で押し、どうにか入られないように保つ。
「今のうちに中に行って!」
「あんたたちは?」
「すぐ行く!おまえら早くしろ!」
その言葉を聞いた四人は、扉の奥へと消えていった。
「あけp!僕は扉を開けてとはいったけど、壊せとは言っていないんだよ!」
「それについては謝る!だがこいつらはどうすんだ!」
「一二の三!で押し合いをやめて!できる限りここに入れるんだ!あとはミガさんの家のように!」
「ギュウギュウ作戦!?か!」
「ネーミングはダサいけど。だいたいそんな感じさ!」
本棚にかかる力がどんどん強くなる。
腕がいたい。
しかし、まだ放すわけにはいかない。
「行くよ!一二の三!!」
瞬間。
倒れた本棚にむらがうように山賊たちが入ってきた。
背中を扉の方にながら扉の前まで急いで下がる。それを追うようにして山賊たちは群がってきた。すかさず先頭の山賊を狙い撃つ。
それに突っかかるようにして倒れた山賊をイツキが仕留め、それ以外の山賊たちを上段下段とどんどん切っていく。
それをサポートするために、五樹の死角にいた奴や、斬れなかった者どもをどんどん撃ち、死体は目に見えて溜まっていった。
あるものは頭を失い。あるものは腕を切断される。
それだけで山賊たちはどんどん死んでいき、どんどんどんどん増えていく。扉からは一体ずつ出てくるわけだが、それでも出てくるスピードは速い。
少し落ち着いた頃には、山賊の死体で扉が完全に封鎖された。隙間から入ろうとした奴を殺していたら…だ。
「終わったか。」
「だね。そろそろ合流しよう。ここにも山賊がいないとは限らない。慣れ…か。」
「慣れがどうした?」
「いや。あけpもこの状況になれやったのかなって。」
「当たり前だろ?目まぐるしく次から次へと厄介事が舞い込むんだぜ?」
「そうじゃなくて。」
まあいいか。
そんな風に言いたげな顔で、イツキは凜たちが出ていった扉の方に向かった。
扉の奥は、どうやらさらに小さい小部屋で、その奥が国の内部だったようだ。結局は白の国も黒の国とは変わらなかっつた。さすがに街並みは少し違うが、それ以前に被害の規模は同じであった。
どこもかしこも傷がついていない建物がない。
そして相変わらず死体が転がっている。
イツキ達は、すぐ近くの河原編で見つかった。
その近くに山賊の死体が数体あり、状況は把握して遅れたことを素直に謝ったことを伝えると。
「いえ。こちらは誰も怪我がなかったので…。大丈夫ですよ。」
と返された。
「じゃあ町長を探しに行こうか。たぶんここにいるから。」
ここでふと疑問が起こった。
「聞いていなかったが、何でお前はここにいると思っているんだ?」
「簡潔に言うよ。あいつは自分以外を全滅させるつもりだと思ったから。」
何かすごい事を聞いた様な気がする。なんだ?今、こいつは今全滅がどうたら言っていたよな?
「まったく。最初からそうするとか言っていればこんな苦労もしなかったのに…。いや。あいつは優しいからな。いろんな意味で。」
「町長が…どういうことですか?」
「詳しい話はできないけどさ。そういう事。あいつは灰色の町、白の国、黒の国に住んでいる人間を全滅させようとしている。自分の力を使わずに、パンドラの災害でね。」
「ジョークの規模がでかいぞ?」
「あけp。これはジョークではないよ。」
「なあ五樹。お前の隠してあることにそれは関係あるんだな?」
「まあね。」
「…それで?何でここにいると思っているんだ?」
「彼は意外に心配性だから。とにかく確認しないとダメなんだよ。」
「町長と知り合いかよ。」
「まあ、知人ではあるね。」
「町長がそんなことを考えるはずが…」
五樹はなぜだか悲しそうな笑い顔をしていた。
「あいつにとっての本物は…僕たちだけなんだ。」
そしてすぐに元の笑顔に戻る。
「それで?具体的に探したい場所とかあるのか?」
「さすがに全体を探すのは時間がかかるし効率も悪い。そこで少し探したいものがあるんだ。」
「何だ?」
「国を変えた。秘宝さ。」
黒の国の下水道とは違い、機械的な臭さが萬栄するその地下通路を俺たちは一列になって歩いていた。
「生活の排水路とは別に組み込まれていたらしい。図書館の地図を見た限りだけど、この先にあるのは確かだ。」
「それで?国を変えた宝ってなんなんだ?」
「何かは言わないけど。あけpは見たことがあるはずだよ?」
俺がこの世界で見た宝?
「ほらあのポットみたいなところにあった。」
「?何もなかったぞ?」
「…もういいよ。あそこにあった四角い箱みたいな奴。あれがこの国、いや、白の国と黒の国にとっての宝だったんだ。」
「何で国の宝があんな所にあるんだよ。」
「正確に言えば、”宝になるもの”って言った方が正しいんだけどね。」
「どういう意味だ。」
「この国の伝説によれば…だよ?あれは山賊を殲滅させてくれる偉大なる箱。らしい。まあ実際はそんないいものではないけどね。」
「いいものではない?」
「まあ見たらわかるよ。」
その溝の中を流れていたのは工業廃棄物みたいな。絶対体に悪いと理解できるもの。それがちょろちょろと流れており、この場所に異様なにおいを漂わせている。地下通路は複雑ではあったが、それを迷いなくどんどん五樹は進んでいった。
明かりは、ここでは電球で、それらを発電するのに風車や水力を使っているらしい。たまに火力だそうだ。
それも図書館で調べたらしい。
「町の地図を見てみるとね?一つの地下空洞があったんだ。ほかには配線とかパイプラインとかびっちり書いてあるのにもかかわらず。なんだけどね?」
「いや待て。それ何処で手に入れたんだ?」
「もしかして…役場ですか?」
「正解。リンちゃん!」
「やくば?」
どうやら分からないといったようにミガさんが首をかしげる。
「こっちでいう役所の事です。」
と、イツキ。
「役場にそんな精巧な奴があるのかよ。」
「町長に頼まれたと言ったら、快く貸してくれたよ。」
「まさかとは思うが…いやなんでもない。」
「脅したりとか圧力はかけていないよ。町の発展に使うという表上の理由は付け加えたけどね。」
「手際がいい事で。」
「ほめても何も出ないよ。ただ…」
扉の前で止まり俺の方を向く。
「箱は出るけどね。たぶんここだよ。」
扉を開けた先の中央。
長方形の箱があった。
その言葉をだす前に、樹はこれは先ほどの仮設の話なんだけどね?と付け加えた。
「黒の国と白の国。何で仲が悪いのか理由を知っている?」
そこの場所は何か生活空間のようなところがあり、数人かがそこで暮らしていた証拠が多数あった。
イツキ達は奥に行かせた。
五樹が俺だけに話したい事があると言って着たので、仕方なく少し奥を見てきてくれないかと言って。
食品が散乱した後に、生活でのごみが多数。そしてそこに置いてあったのは…
「あけpこれ見て。」
そこにあったのは何か指示書な物。
書かれていたのは日本語でありその中身は簡単な物であった。
曰く。
灰色の町近くにて処刑を行う。
「あの争いは…そういう事か。」
「そういう事。ちゃんと両国のために殉職したんだよ。あけpを救った時のあの兵隊さんたちもね。」
「目標は人口の整理か。」
「そう。お互いにいいことだらけだよね?増えすぎた人口を殉職という名のとてもいい踊り文句で殺させる。効率的で画期的だ。」
「なるほどな。だいたいわかった。門番の必要性は…こういうことだな?」
ぺらぺらとめくり、自分の予想が書いてあった場所を引き当てた。
それをイツキに見せると、いたずらが成功したような顔をし、俺に笑いかける。
「そうさ。だいたい、山賊で兵力が減らされるとわかっているのに、地上から攻めようとするバカなんてそうそういない。それだったら技術を上げて空から攻撃できるようにすればいいんだ。となると門番の必要性もなくなる。いつ来るか分からない灰色の町の商人を入れるのにも、上から監視して、入れたら中で確認すればいい話だ。」
「見せられない取引をしていなければ。…という事か。」
「そう。わざわざそんなことをするのは、見せられない取引があり、その見せられないものは運んでいる物ではなく。運んでいる人。」
「つまり、別の国の者。」
「灰色の町の人だったら、白髪の人じゃなくて、黒髪の人が行けばいい話だ。それで解決するし、そこに疚しさはない。」
五樹の言いたいことは大体わかった。だがしかし疑問がある。
「だが一つ疑問がある。お前は黒髪ではなく白髪で行ったんだよな?」
「ああ。そのこと?簡単な話。髪を染めることができる黒と白の色の原料が灰色の町。しかもごく少数しか取れないっていう事。ぶっちゃけすごく貴重な物だったっていう事さ。」
「…そんな貴重な物をお前に使ったのか。」
「あいつの約束は守ったし、そのついでにはしゃいだだけさ。」
五樹の顔には悪気などみじんもない。
五樹が手にとった四角い箱。
それをアイツはシャカシャカ振ったり指で回したりしている。
「そこに書いてあるとおり、黒の国と白の国は仲が悪いわけではなかったんだ。だって。 …同じ政府機関のもとで運用されていたんだから。」
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