巨大な影が舞う戯曲――これは、いずれ叙事詩となるオペラ

 なによりも広大な規模の物語展開に目を引かれがちだが、それを表現するにふさわしい文体にも注目したい。
 全体に響き渡る韻律、自然に配置された交差配列法。
 一見すると、想像を絶する巨大な剣が振られるシュルレアリスムな世界は没頭しにくくも思えるが、それを作者はリズミカルな韻文で見事にいざなってみせている。
 その技巧は小説というより、さながら戯曲のようだ。
 舞台を創造する文が音楽を呼び、リクトという英雄の叙事詩をオペラのように見せてくれる。
 これだけのことをセンスだけで生みだせる作者には嫉妬しかわかない。


 簡単に言えば、「面白い」ということだ。
 この小説……いや、脳裏に浮かぶ舞台をぜひ楽しんでもらいたい。

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