宇宙には未来がある。 それを確かに信じさせてくれる、希望の物語。

 この小説に書かれているテキストの全てが上質であり、作り上げられている世界観の全てが優雅で、作品の全てが新しい未来への可能性を語りかけて来ている。
 そして、これを読んだ私の感想なのだけれど、作者が読者である私たちにこの作品を通して伝えたかったことは、『未来への希望』のように思えた。

 新しい何かに挑戦する人々。新しい世界を知ろうとした人々は、みんな希望を持ってその一歩を踏み出した。
 新しい航路を求め、新大陸を発見した船乗りたち。
 未踏の地へと進む開拓団。
 空を飛ぶことに挑戦した兄弟。
 宇宙へと飛んだスペースシャトル達。

 危険は承知の上だ。でも、それでも彼らは前に進んだ。
 歩き、発見して、深く本質を探っては作り上げてきた。
 そうして歴史は積み重ねられ、今の私たちは生きている。
 もちろん、人類が手に入れたのはメリットだけではない。
 重ねられた歴史の中には、目も覆いたくなるような酷いことだってたくさん起きた。
 それでも、この物語は新しい何かを知ることへの探求心と、それを得た先の心の中に芽吹く、希望のある未来が私たちの行く未来にも存在するのだと言うことを教えてくれる。それを思い出させてくれる。

 果たして今後、宇宙へ進出していく現実の私たちが何を手に入れるのか。

 それは、この物語に描かれているような新しい物質なのか。それとも人間そのものが新しいタイプへと革新していく『きっかけ』なのか。
 劇中の人々が新しい何かを予測し、確信を得てそれを求めたように、inner universe、我々の心の中の宇宙に希望がある限り、明るい未来がきっと待っている。
(長たらしく書いてしまいましたが、とても素晴らしい短編小説だと思いました、すごい!)

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