地を這う少年が、空を歩くための、小さな一歩を踏み出す物語。

まず、世界観の広さに心踊りました。荒唐無稽な化け物がいるにも係わらず、それにきちんと対処するための機関があり、その機関に所属する人たちがいる日常がある。その事が、文章の端々に垣間見えるのがすごく嬉しい。専門用語の一つ一つが、「区別のためにそうでなくてはいけない」という名称だったり(しかも、ものすごいハイセンス)、受験と怪物退治が当たり前のように共存していたり。こういう日常がきちんとあることを示してくれる作品に、僕は弱いです。そういう面で、主人公の両親が対空局(このネーミングもすごく良い!)なのもツボです。

その中で、主人公のマグ君が巻き込まれ、勇気を出すところが、怪物退治ではなく、もっと身近なところだというのも実によかった。彼のブレイクスルーは、「彼女を助けようとした」時点で終わっていて、「その後」は本当に運が良かっただけ、というのが凄く良い。

その後の展開も凄くよくて、現在「集まれ仲間」の甲を読んだところなのですが、これが仕事である以上確実に存在する人種がいて、かつそれが一切間違っている訳ではないという辺り、バランス感覚のよさを感じます。

マグ君が今後、どのような思考を経て、どのようなスタイルに落ち着くのか、今から楽しみです。

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