全編に渡って突っ込みどころしかない、氾濫する異世界転生小説への警告

 まず初めに、僕はいわゆる「異世界転生小説」を読みません。

 読まないのですが、一部の人たちが異世界転生小説の「肉を両面焼きして絶賛されるシーン」や「金貨を10枚単位で数えて天才扱いされるシーン」を引き合いに出し、「作者の頭脳を越えたキャラクターは生み出せないから周囲を馬鹿まみれにして気持ちよくなるための小説が異世界転生小説」と揶揄しているのは知っています。僕はその度に「周囲を馬鹿まみれにすることで生み出された天才キャラ」代表として引き合いに出される奈良シカマル君を不憫に思いながら、「ふーん。異世界転生小説ってそうなんだ」とプリングルスとかボリボリ喰いながら適当な感想を抱いてました。僕の異世界転生小説に関する知識はその程度です。
 
 そんな僕でも「周囲を馬鹿まみれにすることで主人公を天才にする」が、この作品のような意味ではないのは分かります。

 偏差値10というビリギャルを鼻で嘲笑うぶっ飛んだ数字に惹かれて読み始めましたが、中身はもっとぶっ飛んでいました。右も左も馬鹿ばっかり。「お前らよく文明を築けたな」というレベルの馬鹿しかいない異世界で偏差値10の男が無双する物語は全編に渡って突っ込みどころしかありません。しかし物語に登場する最も頭のいい登場人物が偏差値10なので誰も突っ込んでくれません。突っ込み気質の人は読みながら「助けて、突っ込み切れない」と頭を抱えるでしょう。僕はそうなりました。

 これはもしかして氾濫する異世界転生小説への警告なのでしょうか。「お前らがやっているのはこういうことだぞ」と。だとしたら作者様の聡明さが伺える巧みなやり方だと言わざるを得ません。でもやっぱりこの作品は「わーい。ちょうちょだー」とか言っていた童心に返り、ピーマンみたいに頭空っぽにしてゲラゲラ笑って楽しむのが正解な気がするのでした、まる

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