-3日目- 「無限タイムループ」
ピピピ ピピピ ピピピ ピピピピピピピピピピピピ・・・・・・。
本日の目覚めも朝6時45分。お馴染みのスマートフォンが、騒がしくわたしを叩き起こす。
ただ昨日(あれが悪夢の中で視た出来事でなかったとしたら、今日もまた昨日の繰り返しとなるかも知れないが)と唯一違ったのは、寝ぼけ眼のわたしが、先ず最初にスマートフォンを握り締めている左手を見つめた事だった。
アラーム音を停め、ディスプレイ画面に見入ると、カレンダーの日付は案の定昨日のままで6:45。
やっぱり……。
悪夢の様に忌まわしき無限ループの連鎖はまだ終わることなく続いていた。
こうして三度同じ朝を迎えたという事は、多分今度もわたしは死んだのだろう。
あの後、静香のハイペースに乗せられて、ハイボールに老酒にバーボン、ウォッカにテキーラと、大飲み比べ大会へと突入したおかげで、午前零時前の記憶が消し飛んでいる。
おそらくロクでもない死に方をしたに違いない。
居酒屋と救急病院の皆様本当にごめんなさい。
いい大人なのだから、自己責任で自分でセーブすべきだと言われても当然だった。
でも、己を庇う様だけれど、もう直ぐ自分が死ぬのだという現実を、あれ程までにハッキリと意識したのは、これまで生きてきた人生の中でも初めての経験だった。
時間が零時に刻一刻と近づいていくに連れ、単純な怖さを通り越して、このままでは精神が狂ってしまうのではないかとも思える有り様であった。ううん、狂気とでも言った方がしっくりくる感情を抑え込むには、自分を見失うまで滅茶苦茶に飲んで忘れるよりなかった。
だけど、もし今日もまた同じ末期の時を迎える羽目になるのなら、今夜はもう少し気持ちを落ち着けて、まともな精神状態で準備して事に臨める気がする。
とりあえず、わたしが起床後まずやる事は、冷水シャワーとトーストの焼き過ぎには十分気をつけることだった。
わたしはいつもよりもゆっくりして朝食を済ませると、職場に電話を掛けた。
庶務担当者に、急な体調不良を訴えて今日は会社を休ませてもらえまいかと頼み込み、受理してもらう。
そうそう、上司の井ノ上課長に頼まれていた提出書類を、保管庫である書類ケースの“二段目”の引き出しの棚にしまってある事を朝一で伝えてくれる様に伝言を頼んでおくのも忘れなかった。
とにかく、3度目のタイムループに至るにあたって、どうしてわたしがこんな目に遭わなければいけないのか、何故同じ日を繰り返してその日の最期に死ななければならないのか、ゆっくりと時間を掛けて考えてみたかった。
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