午前零時のタイムループ
赤松 帝
prologue
わたしは今夜死ぬ。
午前零時キッカリに。
これは既に決まっていることで、どうあがいてみても逃れられる術はない。
死ぬより他にわたしには何もない。
どう生きるかではなく、どう死ぬのか?
それだけが、今のわたしに与えられたたった一つの使命だった。
おとぎ話の主人公ならカボチャの馬車に乗って我が家に帰れば済むことだけれど、わたしにはそれすらも叶わない。乗るのは救急車で、その帰るべき家すらも失われてしまうのだ。
今夜もまた陰鬱な夜が忍び寄る。死ぬのが判っている訳だから、これほど憂鬱なことはない。
初めの頃は、恐ろしくて恐ろしくて仕方がなかったけれど、今はその恐怖もようやく克服出来た。
とはいえ、死には痛みを伴う事も少なくなく、苦痛や苦悩がないと言えば嘘になる。
何をしていても、何もしていなくても、必ずわたしは無の沼底へと引きずり込まれるのだ。
そして、何の因果律か、わたしだけが記憶を次に残したまま、また同じ日の朝を繰り返すことになる。
わたしは目覚めると同時に、死へと向かう坂道を下る一本道をまた歩き始める。歩みを止めることは許されなかった。死そのものが目的地であり、わたしの行き先なのである。
哀しくもあり虚しくもある永遠とも思える運命の輪をめぐりめぐっている。
朝を迎えても、死の時は刻一刻と近づいて来る。
これはメビウスの輪現象?ううんちょっと違う。蛇が蛇の尾を飲み込み、またその蛇が蛇の尾を飲み、円環をなす。ウロボロスの輪とか言ったっけ?蛇が噛みつき毒牙が突き刺さった様な激しい痛みを伴うわたしの永続的な時の連環は、むしろそう呼ぶに相応しい気がした。
わたしは死神に愛された女。まだ出遭ったことはないけれど・・・。
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