-2日目- 「リプレイ」

「ねえ静香ちょっと聴いてくれる?わたし、もしかしたら午前零時丁度になったら、死んじゃうかも知れない。」

極力、軽い物言いで彼女に説明をする。でも、かえってそれがよくなかったのかも知れない。


「なぁにまどかったら、それ位のお酒でもう酔っ払っちゃったワケ?」

静香はわたしの冗談として受け止めたみたいだった。


「突然、おかしな事を言い出したのは自分でもよく判ってる。でも、これは冗談なんかじゃなくて本気で言ってるのよ。」


「ハイハイよーく判ってますって。わたしも午前零時にはカボチャの馬車に乗ってお家に帰りますからねーだ。」

静香は鉄板のシンデレラネタで返してきた。頭の回転の速過ぎる友人を持つのも厄介なものだ。


「本当に時間がもう無いの。静香もさっき言ってたでしょう?今日のわたしは別人みたいだって。ある意味あなたの言う通りなんだよ。今日のわたしは、昨日のわたしなの。今日起こる出来事を昨日の内に一通り体験しちゃってるんだもの。」


「ゴメン。あたしも酔ってるのかな?まどかの言ってる意味がよく判らないや。」

しまった。頭の回転が速いのではなく、酔いの回転が速いんだった。

この子は酔うと馬鹿話には滅法強いけれど、真面目な話への思考能力は格段に低下するタイプなのを忘れていた。こんな調子でわたし死んでも大丈夫か?


「そうだよね。うん、もう一度説明するから、よく聴いてね。これから起こる事をわたしは昨日の内に経験済みなの。だから、午前零時になったところで自分が死ぬ事も知ってるのよ。だから、もしわたしが倒れる様な事になったらお店の人に頼んで、目の前の救急病院に運んでもらってね。判ってくれた?」

わたしは根気よくこれから起こる出来事と、彼女に請け負って欲しい指示を伝えようと頑張った。


「うんうん。よーく判ったよ。まどかを急性アルコール中毒で救急病院に運べばいいんだね。よし、このあたしに全部任しときな!今夜は大船に乗ったつもりで、ガンガン飲んじゃえー!」


「いやあのね静香さん、それちょっと違うかも・・・」


「大丈夫大丈夫、あたしは全部理解したよ!男が何だっ!ネー。あ、お兄さん、おんなじの2つね!梅チューだよ梅チュー2つ!」

大分わたしの説明した内容とズレてる気がするけど、ま、まあなんとか概要は理解はしてもらえたみたいだから良しとしよう。思っていたよりも随分簡単にあっけなく理解してくれたのが拍子抜けな感じだけど、でもこれで大丈夫かな?

ちょっぴりの心配はあったけど、不安の種が取り除かれたわたしと静香のリミッターはすっかり解除された。



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