-3日目- 「無限タイムループ」

まず、何故わたしが突然死するに至ったのか?

それについては、わたしの死後の結果を知らないので確かな事は解りかねるのだが、原因は家系にあるかも知れない。わたしの父も心臓に問題があり、わたしが高校生の頃に、まだ若くして亡くなっている。

わたし自身はというと、これまで健康診断などで引っ掛かる様な事は無かったけれども、知らぬうちに何らかの疾患を抱えていたのかも知れない。とはいえ、ここ2日間の出来事を思い返してみる限りでは、病院に行っておけば何とかなるとは到底思えなかった。

何故なら、奇妙なタイムループの事といい、わたしの体調以外にも何らかの超自然的な力が大きく作用しているのではないかと考えられたからである。

大体、父や母や祖父母からも、さらに遡ってうちの祖先にしても、そんな能力や現象については聴いたことがない。明らかにこのわたしだけが、何らかの時間の窪みにはまり囚われて抜け出せなくなってしまっている様な気がしてならなかった。何らかの法則、ほつれ、抜け穴といった脱出方法を見つけ出さない限り、わたしはこの無限の時の螺旋構造からは逃れられないのではないかと思われた。でも、わたしはアインシュタインや、ニュートンじゃない。至極普通に生きてきたこれといった取り柄もないわたしにとっては、何がどうなっているのかすら、サッパリ解らなかった。結局のところ、現状を嘆くばかりで、何の発見も得られないまま、無駄に貴重な時間だけが過ぎていく。兎にも角にも、今の段階でハッキリしているのは、わたしには与えられた時間は17時間しか無いという事である。幸いにしてタイムループ以前の記憶は残ったまま保持している訳だから、現段階では、死ぬまでの時間を使って極力動き回り、もっと情報を採取して回るのが最善ではないだろうか。わたしにとって一番最悪で、最も気をつけなければいけない事は、タイムループが出来ず、死んだまま本当に人生を終える事だと思われた。先程まで考えていたこの時の繰り返しに何らかの“法則”が存在するならば、午前零時を迎える前に死んでしまう様な事は避けなければなるまい。RPGゲームの世界と違って、生き返らせてくれる神父様もいなければ、呪文や薬も存在しないのだから。朝、目覚めてからの17時間は、死のリスク管理のレベルフェーズをMAXに高めて、最悪の事態の回避に臨まなければならないと思われた。


“そうか、つまり今日を要は死ななければ、同じ日を繰り返す事もない訳よね。”

それが、タイムループを止める一番の早道と思われた。


“でも、安心して眠って起きたらまた同じ日だったら?”

そうか、昨夜にしてもあくまで記憶がないだけで、ただ酔っ払たまま眠ってしまった可能性もある。死ななければいいという訳でもないのだ。


“だったら明日も会社を休むつもりで、朝6:45を迎えるまでは、夜通し起きてすごしながら、生きながらえてやるわ。”

何だか変な表現だが、それしか考えられなかった。朝まで起きているのはさほど難しくはない。でも、生きているのは難しい。何とも相反したパラドックスである。生き残るための“鍵”を見つけ出して、午前零時を乗り越えるより、他はなさそうだ。


もうすぐ午前11時。タイムリミットは、残り13時間。





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