概要
『俺の名は』 これは、双子の音楽家の人格が交差するミステリー
魂が移り変わっても、変わらぬ愛を誓えるだろうか――。
ピアニストの水樹(みずき)には指揮者である双子の兄・火蓮(かれん)がおり、彼らは15歳の時に交通事故に遭い、それまでの記憶を失っていた。
事故から10年後。
水樹と火蓮はショパン国際ピアノコンクールの会場、ワルシャワで一年ぶりに再会する。
水樹の予選の結果を待つ間、火蓮は年度末にあるショパン生誕200周年記念コンサートの指揮を執れるようになったと告げた。それは二人が夢に見た舞台だった。そしてそのピアノを水樹に任せたいという。
久しぶりに会った二人は一緒に酒を飲み、同じ部屋で寝ることになった。その夜二人は服用している薬が原因で同じ夢を見て、次第に意識が交差していく。
二人とも入れ替わることにほとんど苦痛を感
おすすめレビュー
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- ★★ Very Good!!魂の奏でる旋律が重なり……とけ合うとき
自分とは一体なんなのか。自分というものの実態は、肉体なのか、記憶なのか、感性なのか。
悲しい事故をきっかけに、入れ替わり、重なり、そして融合していく静と動の二つの主題。
魂が肉体から遊離して曖昧になっていく二人が立ち向う真実と、そして迎える結末とは。
音楽に情熱を注ぐ全く感性の異なる双子を主題に、重なっていく旋律は、心に何か騒めきのようなものをもたらす不思議で美しい作品でした。
構成が少し難解であったり、視点の変化などで戸惑う感覚はありますが、音楽の幻想的な響きを文字から生き生きと感じることができ、登場人物の情熱などを生々しく感じることができる独特の魅力がありました。 - ★★★ Excellent!!!入れ替わる人格、崩壊する自我に謎が謎を呼んでいく……。
兄弟の人格が入れ替わるお話です。
実は読む前は、小説で入れ替わりものは鬼門なんじゃないかと敬遠していました。映画やテレビドラマみたいに映像がない分、今どっちがどっちだかわからなくなってしまうので。
しかし読んでみると、このお話は小説であることに意義があると思うようになりました。
今入れ替わっているのか、読み手がわからなくなる。しかしこの兄弟たち二人も、自分が今どちらかわからなくなっていく。
この感覚が奇妙なリンクを起こし、気づけば物語にのめり込んでいました。これを著者様が狙って書いているのだとしたら、脱帽ですね。
そしてミステリーのような構成が光ります。入れ替わるたびに謎が出てきて、最…続きを読む