アイスダンスという日本ではまだマイナーな競技を通して、主人公(制覇くん)が成長していく様を丁寧に描いた作品です。ぐいぐいと引っ張っていくプロットラインとは裏腹に、実は筆致は比較的控えめで、それが良い効果を出しているように思えます。
幼馴染の少女への恋心未満の好意や、突然現れた帰国子女のライバルの存在も、ありきたりな設定に終わらず、品よく抑えた筆致で好感がもてます。
主人公の自分の名前に対するコンプレックスや、自分の未熟さへのくやしさ、そして個性豊かな脇役たち。惜しむらくは制覇くんが中学生というにはやや成熟しすぎているように思われること。
とはいえ、それは読んでいる時には気にならず、ぐいぐいと引っ張られる読書体験でした。
本当はもっと多くの作品を生み出す土壌がある物語なのでしょう。中学生を主人公としながら、大人の読書に耐える作品に仕上がっています。
一言で言ってしまえば「スケートを愛する少年少女のお話」なんだけど、スケート、特にアイスダンスと言う種目を通して、彼らが悩んだり苦しんだりを乗り越えながら、周りの人たちの協力を得て、少しずつ成長していく過程を切り取ったストーリー。
そこには年相応の悩みがあったり、自分の実力に対するもどかしさがあったり、時には目標を見失ったりする、等身大の中学生の姿がある。
だから読んでいる方としてはとてももどかしく、ひたすら彼らに声援を送るしかないのだが…。
ぶっちゃけスポ根モノの部類ではあるのだろうが、徹底的に爽やかに書かれているところが好感が持てる。
素敵なお話でした!
氷上のマイナー競技・アイスダンスを題材にした青春スポーツ小説です。
昨今、フィギュアスケートに関しては、国際大会における日本選手の活躍もあって、世間的な認知度の高いスポーツになっている印象があるものの、アイスダンスについては私もほぼ予備知識がゼロの状態でこの作品を拝読しました。
結果から言えば、純粋に青春小説として面白かったです。
スケート競技にまつわる実際的な蘊蓄を学べる点は言うまでもないのですが、主人公の内面を綴った描写が素晴らしい。
何気ない切っ掛けから競技と関わり合うことになり、何だかキツいなあと不満を感じたりする場面がありつつも、のっぴきならない状況を経て徐々に本気でアイスダンスへハマって行く過程は、何かいかにも現実にありそうな展開で唸らずにいられませんでした。
フィギュアスケートの中でもテレビなどで取り上げられることの少ないアイスダンスを題材とした作品です。
フィギュアスケートを滑るということそのものがどういう事なのか、その中でもアイスダンスというのはどういう競技であるのか、といった点がたいへん良く描かれています。
特に、男性側のリードが大切とされるアイスダンスにおいて、いかに男性側が苦労をするか、高いスケーティングやフォローが求められるかがとてもリアルに描かれていて、感銘を受けました。
実際、アイスダンスを鑑賞することが好きな私は、うんうんと頷けたり、なるほどと納得したりすることが多かったです。
しかし、たとえアイスダンスにもともと興味がなかったとしても、十分に楽しめます。
むしろ、高い文章力、構成力に支えられているため、本来一気に読んだら知恵熱が出てしまうほど複雑なものを描いているのにそのストレスを感じさせず、なおかつその複雑なアイスダンスについての記述が一つのエンタメとして楽しめるものに仕上がっています。
主人公やパートナーとなる陽向さん、コーチなど、キャラクターも生き生きと、目の前にいても不思議ではないくらいに描かれていて、親しみを覚えます。
特に主人公の嫉妬や上達したいという思い、でもどこかでがむしゃらになり切れない様子など大変リアルに描かれていて、しかもそれがただの個性に終わらずに終盤でしっかりと回収されて、スケートを通して彼が成長したことがはっきりと伝わってきます。
そのために、アイスダンスという競技を紹介するだけでなく、小説としての面白みも間違いなく備えています。
素晴らしい作品でした。
主人公制覇くんが転校生がやってきたのをきっかけにしてアイスダンスを始める物語。
私はアイスダンスという競技をこれまで1度も見たことがありませんでしたが、登場人物たちがまるで目の前で滑っているかのように臨場感を感じました。
普通のラノベのように萌えやドタバタしたラブコメがあるわけではありませんが、繊細で巧みな描写に引き付けられ最後まで一気に読んでしまいました。
登場人物のその後も気になり、なんで物語はここで終わるんだろう?と少し疑問に思いましたが、それはおそらくこのお話が「モミの木」というスケートリンクを巡るお話だからなのでしょう。
登場人物は皆それぞれにスケートリンクに対する思いを持っている、いわばスケートリンクは制覇と並ぶ第二の主人なのではないでしょうか。
このお話はスポーツを通して少年少女が成長する物語でもありスケートリンクやマイナースポーツに対しての思いを切々と訴えかけてくる、そんなお話だと思いました。
是非多くの方にオススメしたい小説です!
読み始めて、キャラクター配置を把握して、これは恋愛が絡んでくるのかな? と。
そんな浅はかな予想を、ガリガリとエッジで削り取られていくような読後感でした。
もっとキャラクター性を高めて恋愛ジャンルで出せばいいのに、と考えてしまった自分を恥じたい。これは、紛う事なき思春期を迎えた少年のドラマである。
そう、叫びたい。
マイナースポーツ。
私事ですが。
学生の頃は、それなりに多様な部活動をしていましたし、総合スポーツ雑誌を愛読していた時期もあります。
事情や苦労や競技レベルなど、察せられる部分も読み取れて、頷くこと多く。
また、主人公の、幼さ、拙さ、経験の足りなさ。
そことリンクして、アイスダンス業界全体が抱える問題点も浮き彫りにされており。
マクロとミクロ。
おぉ……! ただの、未経験者が才能を発揮するだけのサクセスストーリーではないぞ、と最後まで読ませて頂きました。
ラストにドラマティックな盛り上がりが欠けるかな、とブレーキをかけられた思いもありますが、そこは第一部とのことで。
是非、第二部を、とお願い申し上げる次第であります。
踊る文字、ストーリーの滑走、どうか、皆様も共に、ダンスを。
フィギュアスケートといえば、一人ずつ滑るのが当たり前。
いやいや、そんなことないんです。
アイスダンスという、男女のペアで滑る競技があるんです!
私も存在だけは知っていましたが、あまり深く理解はしておりませんでした。
やはり競技人口が少ないだけあって、なかなかテレビなどでも注目されません。
しかし、私はこれを読んでアイスダンスに興味を持ちました。
今度YouTubeか何かで動画を検索します!
そして、アイスダンスが世間でもっと注目されるようになったら、私はどや顔で言うのです。
「このアイスダンスの小説、かなり前に読んだけどすごく面白いよ」って。
間違いなく、アイスダンスの知名度に変化を起こす力のあるこの作品、今のうちに読んでおいて損はないはず!
魅力的なキャラクターが、あなたをアイスダンスの世界へ誘います。
私は制覇くんが好きです。
名前がすごくかっこよくて。
アイスダンス。そんなマイナーなスポーツを題材にしている作品。
これは決してスポーツ小説だけどそれだけじゃない。私はそう言いたくなりました。そのスポーツの中で恋などそういった感情も書かれていて面白かったです。
またこの作品を読むときは1話、2話で止めるのではなくて一気にすべて読んだ方がいいかもしれません。話が進むたびに、盛り上がってきます。
更にこれは大見出しを見る限り序章っぽい。確かに序章みたいな話だといえばそうだけど、それにしても随分と濃い話のように感じます。これからどんな事件が巻き起こるのか楽しみです。
多分読むのなら今から読んだ方がいいと思います。ワクワクが止まりません。あぁこんな青春過ごしかったな
第15話まで読んだところでのレビューです。
とにかく面白いです。ここが大事なのでもう一度、とにかく面白いです。マイナーなスポーツを題材にしていて、しっかりとした長編で…と入り口は高いかもしれません。しかしそれを吹き飛ばす読みやすさ、物語の展開、丁寧に描かれていく少年の成長、小説の面白さを味わうことができるでしょう。
魅力的なのはやはり主人公の少年、最初は読者同様に素人です。彼がライバルを得て、たくさんの大人と出会い、努力を重ねながらたくさんの物を得ていきます。その成長の軌跡に共感し、応援し、成長の喜びをともに分かち合うことでしょう。
現時点で物語はかなりの盛り上がりを迎えようとしています。少年の成長の成果が明らかになってきています。幸いなことに連載中、今から読み始めることをお勧めします。