もしこの小説が一人称だったら悶死していた

 カクヨム大賞の長良黄泉さんの近況ノート(https://kakuyomu.jp/users/kelteco/news/1177354054882266584)で紹介されていたから読んでみた本作。なるほど、確かにこれが★17は納得いかない。というわけでレビューさせて頂きます。

 怪談に扮し、怪談と成るに至った男子高校生と、一人前の怪談に成りたいとのたまう風変わりな少女のお話。承認欲求がおかしな方向にすっ飛んで行ってしまった結果、思春期をこじらせまくっている主人公、木野孝好くんが実に良いです。生温かい目で見守りたくなります。こういうラブコメ的ストーリーは一人称で書きたくなるものだと思うのですが、三人称にしたのは大正解と言えるでしょう。一人称だと読者は主人公を直視出来ずに悶死していたと思います。

 ストーリーも良いです。面白くて、少し悲しくて、やっぱり面白い。そのバランスがよく取れています。また「芝居」が一つの大きなテーマになっているだけあって地の文の言い回しも芝居地味たものが多く、それが作品の雰囲気を醸しだすのに一役買っています。非常に巧みです。

 約40000文字程度の中編なので、すぐに読めると思います。年の瀬の休みにでも是非、ご一読下さい。