国際社会を覆う巨大で黒い塊を、スライスして目の前に突き付けたような。

二つの架空の国。その国の間で長きにわたって続く争い。
その血で血を洗う争いにより作られた国境は、『ブラッド・ライン』と呼ばれた。

その『ブラッド・ライン』で、一人の男が殺される。
それは、ある世界的な人気アーティストだった。
彼を殺したのは、誰か。
彼は、なぜそこにいたのか。

この殺害事件の裏にある、メッセージとは。
その意味を理解したとき、貴方はきっと衝撃に襲われるだろう。



と、これはあくまで表のレビュー。

本当のレビューは、こっから。


この物語に出てくる事象、人、考え方、エピソード。
どれも、現実の社会をスライスして、私たちの目の前に突き出されたものだ。生々しいほどに。
それは、決して架空の物語ではない。
それは現実に、この世界のどこかで、起こってきたことの数々。

それを、大国の武力に怯えるか弱き村民として、ロシアの裕福な娘として、日本のうだつの上がらない中年男として、世界的スターの元妻として、テロを主導する指導者として、家族を守るためにテロに立ち向かう兵士として、テロを憎む一市民の代表として……いろいろな立場で、考えさせ、見せてくれる。

そして気づかされる。

彼らが引き金を引くその腕を、背後で握っているのは。
撃てと促しているのは。


誰だ?


無意識だとしても。
それを、このまま放置して無関係を貫くのか。
そうすれば、我々の行く先に待っているのはこの物語と同じ結末だろう。

それとも……別の道を行くのか。
今ならまだ。引き返せるんじゃないか。違う道を行くことができるんじゃないか。
そこに、わずかな希望を感じる。

それにはまず、気づかなければいけない。


何に?


その答えが、この物語の中にあるからさ。
読んでごらんよ。
きっと、いままでと違った見方で世界を見れるようになるからさ。
そして、そこで見つかるものこそ。
世界を救う、唯一の鍵なのかもしれないよ。

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