いま、そこにある危機。それを最悪な形で目の前に。

本作は、サイバーセキュリティを題材に、現実のネットワーク社会への警鐘を鳴らす意欲作である。

それと同時に、一級のエンターテインメント作品としても成り立っている。

私はIT用語にはとんと疎い方だが、それでも彼らの扱う製品や現状がどういうものなのかは理解できたし、用語に馴染みがないからといって読むスピードを落とすこともなかった。
一方、この業界に詳しい人であれば、さらに一層この作品を楽しめたのだろうなと思うと少し悔しくもある。

主人公とその友人である天才プログラマーは、かつては共に育ち、共に夢を追っていた二人だったが、ある地点から別々の道を行くことになる。
彼らが再び対面したとき、彼らが被っていた帽子は一体何色だったのだろうか。
黒か白か。
私には、あそこまでのことを起こした彼でさえ、かぶっていたその帽子は白だったように思えてならない。

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