物語の冒頭から、何やら寒風吹き荒ぶというか……。
冷たい風が心の隙間を通り抜けて行くんです。
そこに流れる空気は冷たく乾燥していて、主人公は年齢的に若いにもかかわらず、何故か人生が終わっているような、そんな悲壮感が漂っているんです。
そこに現れたのは、冷たい手を持った美しい女性。
彼女はその手の冷たさとは裏腹に、温かい言葉を人々にかけて行きます。
常に前向きな彼女と異なり、主人公は夢も希望もなく、失意のどん底に。
そんな中、彼女の言動がいきなり180度ひっくり返り……。
そこからの胸のすくような展開はお見事でした。
幸せな読後感に浸れる、温かい物語です。
どうぞ、本編でお確かめください。
主人公はホワイト介護施設に勤めていましたが勤務先が潰れ、ブラック介護施設「グッド温」にやってきました。人の入れ替わりが多く、サービス残業は当たり前。給与は安く、残業代は出ず、休日出勤も当然のようにあります。辞めようにもなかなかタイミングを見い出せません。いつしか友人達とも疎遠になってしまいました。
そんな主人公の前に新人職員「詩節美雪」が現れます。彼女の介護の腕は素晴らしい。どうやら美雪は主人公のことを知っているようで……。
今話題の介護施設をテーマとした作品です。介護ものは最近webでもよく見聞きする内容の1つです。ですが、この作品は他の作品とひと味違う。
ブラック企業や介護現場の様子がコミカルに、だけどリアルに、描かれているのです。テンポの良い展開はとても読みやすい。
読み終えた時、こんな風に擬人化するのか、と驚きました。擬人化の答えは是非、最後まで読んで知っていただきたいです。
今村さん(著者)は、なぜこうもブラック企業をコミカルに、そしてリアルの書くのが上手いのだろう?
ご本人曰く「実体験による」わけだけど、それ故のリアリティと、でもそれをブラックな笑いに変えて、エンターテインメント化する、そんな力が筆者にはある。
ホワイト介護施設が潰れ、ブラック介護施設で働く主人公は、その労働環境で行き詰まっている。そこに颯爽と現れる美女職員の詩節さん。
彼女の気持ちいい活躍に、なんだかスカっとします。
勧善懲悪ならぬ、勧ホワイト徴ブラックな物語。
理不尽なブラック上司を殴りたい人は、ぜひ本作をどうぞっ!
テンポの良い展開で、あなたの心の中の労働基準監督署がきっと嬉しい悲鳴をあげるはずです。