重厚なのに読みやすい、傑作社会派ノベル……!

彼を殺したのは、一体どこの国の人間なのか?

大量死が当たり前な世界情勢の中、様々な視点から多角的に描かれる、一個人のミステリアスな死の真相とは……。
異国の雰囲気を醸し出す翻訳調の文体が、この重厚なプロットに大いに貢献しています。プラス読みやすさとの両立も難なくクリアしており、一介の書き手として正直羨ましく思いましたw この文体、自分の理想とするところに物凄く近いです……!

ふとこちら側の世界に目を向けると、「白い黒人」MJは既に亡く、「黒いミック・ジャガー(こちらも頭文字MJ!)」と呼ばれたプリンスも鬼籍に入ってしまいました。
近年、ネット配信の台頭によって小説も音楽もその消費ペースを益々激しいものにしています。抗うこともできず、只々濁流に呑み込まれるが如く消費あるいは浪費し続ける日々の生活。そこに投じられた一石の波紋のように、この作品は読者の心に静かな余韻を残すだけでなく、単なる浪費以上の、かけがえのない読書体験をもたらしてくれるものと確信しています。

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