世界に耳を澄ませたら、何が聴こえる?

世界的なスーパースターである"M"が、紛争状態にある二ヶ国間の国境"ブラッド・ライン" で、射殺体になって発見される。
Mの死は、様々な国、様々な立場の人々の心を、波紋のように揺らしていく。

あらすじからはどういった話なのかなかなか想像できないまま読み始めました。
そしてすぐに、甘さも容赦もない生々しい展開に圧倒され、心を鷲掴みにされてしまいました。

『憎しみの始まりを 君は知らない それなのに 渡されたそれを 君は次の人へと手渡していく』
というMが作中で歌う歌詞がぐっさりと心臓に刺さります。
自分の手の中にある常識は、本当に自分のもの?
無意識のうちに、誰かから手渡されていたもの?
そう、自問自答したくなります。

カクヨムではあまり見ない、非常にずっしりとした読後感の小説で、個人的な願望ですが、こういった読み味の小説が増えてほしいなと思いました。
8万字という比較的短い分量で、この密度はそうそう味わえるものではありません。

あまりの慈悲のなさに目を背けたくなるような瞬間もありましたが、これが今の世界を覆っている現実なんですよね…。
読み終えた後、心の中でせめぎあっている声に、しばらく耳を澄ませました。

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