森見登美彦作品の腐れ大学生が書きそうな面白エッセイ

 個人的に僕はエッセイの醍醐味は「切り口」と「語り口」だと思っています。

 例えば「バックパッカーとして世界を放浪している最中に安宿で出会ったアラブ人と意気投合して油田掘りに挑戦したら本当に掘り当ててしまい手に入れた財産を転がしていたら全世界の富の1%を保有することになった」ぐらいに突飛な経験をした人でも、語り口がつまらなければきっとつまらないエッセイになるでしょう。そしていくら語り口が面白くても「ステーキはおいしい」程度の話をひたすら延々と続けられたら、やっぱりつまらないエッセイになるはずです。

 その点、このエッセイは非常に優れています。要点をかいつまんで話せば三行で終わる話(一行ではないのがミソ)に思索に思索を重ね、ちょっとしたレポートぐらいの分量を以って滔々と説き伏せ、なおかつそれが変に理が通っていて面白い。最高です。なんというか、森見登美彦作品に出て来る腐れ大学生がこういうことを考えていそうな雰囲気があります。(作者様が腐れ大学生だと言うつもりはございませんので悪しからず)

 ためになる話かどうかと言われたら、多分ならないのですが、長い人生意味のあることばかりしてもつまらないでしょう。エッセイの醍醐味を存分に感じられる面白エッセイ、是非ご一読下さい。

その他のおすすめレビュー

浅原ナオトさんの他のおすすめレビュー75