日々当たり前に暮らす中で、ときどき行き当たるささやかな疑問や気付きや思いつき。
普通ならスルーしてしまいそうになりますが、それらの発見から目をそらさずに正面から検証しようとしているが、このエッセイです。
たとえば、ウーロン茶の親しまれ方は怪しくないだろうかと疑問を呈し、ポテトサラダにおけるそれぞれの食材の相性から友情というものを分析し、散髪に行けば、美容院で髪も持っていかれ、お金も取られるのはおかしいのではと気づいてしまう。
こんな一晩寝たら忘れてしまいそうな日常の出来事を、正面から突き詰めようとする姿勢に、ついくすりとさせられます。
異様に理屈っぽいのにユーモアがあって読みやすいという独自の文体も魅力的で、決して特別な体験が書いているわけでもなく、我々の誰もが身近に感じていることを書いているのに、ついつい読むのが止まらなくなってしまう不思議なエッセイです。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
元よりウーロン茶からぽつぽつと読み進めていたものなのですが、最新話の森見信徒のお話でレビューの衝動抑えきれず、こうして書くことと相成りました。
読者にとって、神様(と呼べる作家)と出会えるかどうかはひとえに運に尽きます。この人はがっちりと森見作品に心掴まれ、引き摺られるままに歩いてここまで来たのだなあ、としみじみ思いました。
おもしろいながら艱難辛苦の道のりだったようですが、なんて幸せな引き摺られ方でしょう。うらやましささえ感じます。
今後とも、おそらく出版され続けるであろう素晴らしい森見作品を楽しまれますようお祈りします。
そして、変わらずおかしみのある人生を歩まれますよう。
個人的に僕はエッセイの醍醐味は「切り口」と「語り口」だと思っています。
例えば「バックパッカーとして世界を放浪している最中に安宿で出会ったアラブ人と意気投合して油田掘りに挑戦したら本当に掘り当ててしまい手に入れた財産を転がしていたら全世界の富の1%を保有することになった」ぐらいに突飛な経験をした人でも、語り口がつまらなければきっとつまらないエッセイになるでしょう。そしていくら語り口が面白くても「ステーキはおいしい」程度の話をひたすら延々と続けられたら、やっぱりつまらないエッセイになるはずです。
その点、このエッセイは非常に優れています。要点をかいつまんで話せば三行で終わる話(一行ではないのがミソ)に思索に思索を重ね、ちょっとしたレポートぐらいの分量を以って滔々と説き伏せ、なおかつそれが変に理が通っていて面白い。最高です。なんというか、森見登美彦作品に出て来る腐れ大学生がこういうことを考えていそうな雰囲気があります。(作者様が腐れ大学生だと言うつもりはございませんので悪しからず)
ためになる話かどうかと言われたら、多分ならないのですが、長い人生意味のあることばかりしてもつまらないでしょう。エッセイの醍醐味を存分に感じられる面白エッセイ、是非ご一読下さい。
まず、考え方が面白い。
時に「成程」、時に「そうきたか」、
時に「完全同意だ!」もあれば、時には「いや待たれぃ」も。
どの話を読んでも、その感想を作者様と語り合いたくなります。
そして、書き方も素晴らしい。
持論について述べた作品はカクヨム上にもたくさんありますが、ここまで笑いながら読ませていただいたのは初めてです。
人を楽しませる文章の書き方を熟知しておられるなぁと感服致しました。最後のオチや締めくくりにやられること数回でした。
勿論どの話にも楽しませていただきましたが、自分は特にチャリ倒れ・そうめん・語彙の話が興味深かったです。
嗚呼、手土産持参で作者様と語り合いたい。